第2話 書籍化できるかも。

 どいつもこいつも見る目がない……いや私の頭がおかしいのか? あんなにみんな褒めてくれるのに……いやみんな頭がおかしいのか? 全員の頭をおかしくするにはどうすればいいんだろう……金持ってるやつの脳みそをおかしくさせたい……どうすれば……でももう遅い……とコンテストに落ちて泣き暮す私のもとにカクヨムからメールが来た。「作品についての話があるんだけどこのアドレスであってますかね?」みたいなやつだ。


 は? これ絶対書籍化でしょ。


 ほかの書籍化している人のエッセイとか読むと「書籍化とは思わなかった」とか言ってるけどそんなことある? 「まさか」とか言ってる場合じゃないでしょ? これ絶対書籍化でしょ? ちなみに私はそのあとしばらくしてから性描写が原因で作品(テレフォンセックスして女の子が「赤ちゃんできちゃう」って言う話なんだけどなぜ私はこれを載せて大丈夫だと思ったのか?)が公開停止食らってるから普通に爆弾抱えてる状態だったわけですけどそのときはそんな可能性微塵も考えずに「やっべ書籍化やん」としか思わなかった頭がおかしいので。みんな小説なんか書きながらよく正気保っていられるな。

 で即座にメール返したんですけど普通に書籍化の打診でしたね。


 書籍化の打診。富士見L文庫から。富士見L文庫……富士見L文庫って私あんまり本読まないから詳しくないけどお母さんの好きなレーベルじゃん! うちのお母さん(すごく可愛い。私を小さい頃から知ってる人によると「うちのおかあさんかわいいでしょ!」ってよく自慢していたらしい)は定年した父親(お母さんほどじゃないけどちょっと可愛い。変な人)を足に使ってBL小説を買いあさっていて富士見L文庫はお母さんの好きなBL作家さんがライト文芸を書いていたりするのである。お母さんはライト文芸も好きなのだ。あと薔薇十字叢書やってるところやん。私ミステリ好きの割には京極を通ってない(私と同世代のミステリ好きはだいたい通ってる道だけど私ってば分厚い本が苦手だから……)からあんまりよく知らんけどな……。って今まさに調べて知ったけど薔薇十字叢書っていろんな出版社のいろんなレーベルから出てるんだね! 無知!


 とにかくそこから「書籍化どうですか?」って富士見L文庫の編集さんからメールをもらって前のめりで「わー! やります!」と返事して、「詳しい話するんで打ち合わせしませんか? 関東近郊ですか?」というメールに「そうっすけど打ち合わせはちょっと難しいっすね!」と返した。私は家からあんまり出られないのだ。情緒が不安定だからではなくこぐまが家にいるからである。こぐま(くま耳のついたベビー服をたくさん買ったらTwitterのフォロワーさんがあだなをつけてくれた)は幼稚園就園前の幼児でとってもかわいい。とってもとってもかわいい。親が座っているといつもお膝に乗りたがるしトミカで遊んでるときに床に落とすと「だんぷかーちゃんいたーい。かわいそー」とダンプカーの心配をするし私が小さいかさぶたを作ってると「いたいー? だいじょぶ?」と聞いてくるし公園で赤ちゃんが泣いてると「だいじょぶ?」と駆けよっていくしとにかく心優しいのである。ついでに自分がこけたときも割と大袈裟に「いたーい!」と言うのが可愛い。ブロックで何か作品を作ったりすると自分で「かんせーい! すごーい!」って拍手しているし世界に愛されている自信がある幼児なのである。抱っこしてあげちゃう(とても重い)。

 そんな激きゃわボーイこぐまちゃんと同居しているので家を空けるのは難しいのだった。編集さんもそういうことは普通に想定しているようでレーベルの説明とかすぐに送ってくれた。

 それで書籍化の話は少しずつ進んでいくわけだけれど、だんだん怖くなっていった。

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