弾正台のカジャ

あばら屋

第1話 導入:なかまがどんどんいなくなる

 ・・・これで何人目だろうか。苛立ちが腕に伝わったのだろうか、手が震え出す。目の前にあるように感じられたそれから顔をそらすように、傍らでパソコンをいじるに声をかける。

「なあ、はどこ行った・・・。」

「それがセンター街へから足が掴めねえ。」

 モグラと呼ばれた男は目を画面から離さずに言った。どこか気楽な印象を受けるような声音だったが、顔は苦虫をかみ潰したような表情をたたえていた。

暗い部屋の中、突然蛍光灯がバチッバチッという音を立てて消える。この部屋の中で最も大きな光源だった。

「どのサツなんだ・・・。」

 彼は彼自身のパソコンの画面に並ぶ膨大な顔を眺める。しかし実際、彼はその顔すべてを覚えていた。自分が見逃すはずがない。

 彼はそのとき自分の手だけでなく、歯もガチガチと音を立てて震えているのに気がついた。そしてようやく理解した。この震えが苛立ちによるものではないことに。

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