第4話
7。『バンシーさん、こんにちは♪』
子供の柔らかく温かい脳ミソには、沢山の状況変化が不可欠だ…。
ねー?…何、話してるのー?
こうしてると、何故か…。
小さい頃、母親の尻にしがみ付いて買い物に同行していたのを思い出す…。
母親が、八百屋の親父やご近所さんと話し込んでいる間の
その上『キチンと挨拶しなさい。』とか…どんな無茶振りだ、とさえ思ったな…。
まあ。
子供には、ゆっくりご歓談やゆっくり解説動画は無理だという、哲学話だ。
入口から、真っ直ぐ食堂を通り抜けた正面に…。
小さいが、鬼髭生やした筋骨逞しいオッサンがいた。
…………あえて『ドワーフみたいな』という表現は使わない。
何か、大切な事実関係や前提条件とかが本格的に確定してしまいそうだから…。
それはともかく、オッサンだ。
銭湯の番台みたいな所に何故か陣取り、その厳ついオーラで来る客をいちいち威圧するのが担当職務なのだろう。
番台の左手奥の出入り口から、食器とかを洗う水音とタワシの擦過音…。
それと……。
「……♪♪…♪…♪♪…」
女性の鼻歌らしき声が聞こえてる。
それらをBGMに…。
ローテは、ドワー…じゃなく、オッサンと話し込んでいる。
「………!?……!……………………!…」
………どうやら。
俺を何処かに連れて行きたいが為、その前に風呂に入れたいらしい。
まあ、今の俺の身なりから言うと、洗濯や洗浄というのは正しい選択なんだろうが…。
……む。
話が着いたようだ。
ローテはオッサンに、銅貨数枚を放ってから俺を担ぎ直し、番台右側の階段を上り始めた。
階段を上り終える際、オッサンと目があった気がした…。
ローテは左奥の部屋の前に来てから…。
………俺を落とした。
うむ。
そのままの意味でだ。
言い訳のしようもないほど、見も蓋もなく落とされた。
歩みが止まったと思った瞬間、気が付いたら廊下の木目がハッキリ見える距離たったから、背ける事も、恨み言を言う暇さえなく…顔面から落ちた。
落ちるしかなかった…。
目を閉じたかったが、俺には目蓋がなかった。
…なんか、居たたまれなかった。
時間にして…わずか2秒弱のダイブだったが、フリーフォールより怖かった…。
祈りも恨みも心構えもないまま、突然の暴虐に
…知りたくもなかったが。
そんな…怒りだとか、悲しみだとか…伝えきれない色々な感情を、暴挙を行った当人にぶつけようと顔を上げた瞬間!
「ちょっと待ってて…」
そう、冷ややかに言い捨てて…暴君ローテ嬢はドアの向こう側に消えたのだった。
8。『怪奇!? 心の迷宮にゴーストが1体現る。』
俺は支配者だ…。
お昼過ぎにも拘わらず薄暗い、この空間の…。
…絶対的支配者!!
「…………………」
何たる全能感だ!
俺は、今、この瞬間に!
静寂なる…この暗黒空間を完全に支配しているのだ!!
「……………………………………」
……さ、さあー…来るがよい!
我が暗黒の
「…………………………………………………」
ドムダムドム!!
いきなりドアが激音を発した!
ヒッ…。
『うっさいわよ?!』
ドアの向こうから威嚇音と、くぐもったローテの怒鳴り声が聞こえてきた…。
………び、びっくりした!
ポルターガイストかと思った…。
……………え?!
聞こえんの?!……ドア越しに!?
………ふむ。
どうやら俺の…心の声は意思とは関係なく無作為に伝播するのかな?
何とか…伝えたい時に伝わって、伝えたくない事は伝わらないように出来ぬものか…。
俺は別段、秘密主義な人間ではないが…。
心の声が全開というのは色んな意味で頂けない。
俺にも男の子の時間や、この世界に関する独考の時間が必要だからな。
第一………この先どうなるかは分からないが…。
口よりも手足が先に来るローテのような手合いと同行するなら…。
………何とかしないと、身が持たん。
あの調子じゃ、いつ『手が滑った』的なクソ詰まらん状況で殺害されても、可笑しくないからな…。
ある意味、喫緊の課題…最優先事項というやつだ。
…………今も、ドアノブに逆さ吊りにされてるしな。
………………………………………はあ。
まあ、ローテ以外の人間との会話の機会が未だないから…結局のところ何とも言えんのだが。
何かこう…ご都合主義的な素敵スキルとか発動しないかなー。
それか『こうすれば、絶対出来るようになります(確約。)』みたいな少年漫画チックな修行方法とか無いかなー?
「………………………………………………………………」
………………はあ、切ない。
゛ありますよ…。゛
あん?……………おわ?!
そいつは…。
スー…。
向い側のドアを音もなくすり抜け、俺の側に近寄って来る。
くう!…逆さマジシャンか?!
゛違います! 私は立派な…幽霊です!あと、逆様なのは、あなたです!゛
そいつはファイトスタイルを取って…。
……元気に自己紹介した。
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