第2話

3。『ビキニアーマー、二度目のクリティカルヒット!』




……ギシ…ギ、ミシシ…ギギ……!…。


「………」


…ギシシ…メシ、ギ。


「……………?」


何かな? さっきから…。

ギシギシミシミシ…て、非常に五月蠅うるさいんですけど…。



それに何か痛いし…。



何の音だ…?


どうやら眠っていたらしい俺は…。

ようやく視力の戻り始めたつぶらな瞳(ぬいぐるみだから、つぶらない瞳でもOKだ)で自分の周りを見回す…。



「………………………!?」



………何これ?どゆ事?


視界が逆…だと?!

うあー。

土の地面が頭上30cmぐらいに見えるー。


しかし、揺れるな…。

揺れ過ぎだろ、これ。

何だ?この揺れ…。



あと、揺れる度に身体中に激痛が…。


痛みから逃れる為、俺は堪らず身を捩る。


「…………!…………!…」


そして、頭に血が登りそうな(ぬいぐるみだからその気配はないが)体勢で、更に見回した先に…。


「……!?」


驚愕の真実が、そこにはあった…。



……結論から言うと…俺、吊るされてるナウ。



荒縄で…魅惑のぬいぐるみバディが!

俺のナイスバディが!


ボ、ボンレスを通り越して…もう何かアート的な何かに昇華させようとでも言うのか?

超強めにフン縛られてる!


くそ、内骨格も外骨格もないからと無茶苦茶しおって…。


そして、思い出した。


コイツだ…。

話し掛けようと近付いた俺を、中の綿が飛び出るほど暴行した…金色の巻き角を生やした黒髪の敵性ビキニアーマーだ。


よし。

これから、この暴力女の事をビキニアーマーと呼ぼう。


やーいやーい、ビキニアーマー♪

ちょっと可愛くて巨乳だからって、そんな怪しからん格好が許されると思うなよ~♪


ギュギュリ…ギリギリ!ギュギュー!


え?!


おわ!

全身に張り巡らされた縄が、これまで無いほど締め上げ始めた!


い、痛!痛い痛たたたたたたた痛い痛い痛い!


さ、裂ける!千切れる!綿が出…。


その時、俺は…。

見た事の無いような冷やかな…そして美しい金瞳と目が合い…確信した。


「…!!」そう、殺気!



「全部、聞こえてんのよ!!」

耳まで真っ赤にした暴力…否、彼女が放とうとしているのが…。

膝蹴りである事が、容易に推察出来るほどの力の集中が…彼女の左膝から伺える。


どんなに身を捻っても回避不能だろう。

えと、あれだ。

サッカーボール。

それも、運搬用ネットに入れられ吊るされた…さっかーぼーる…。


死んだな…。


振り子の原理や円運動とかを十分に利かせた高威力の膝蹴り。

これは……確実にぃ死ぬる(森本さん風)。


ドゲシ!!


俺の意識は、再度…井戸の……底へ…。








4。『これは…ツンデレではない。』




「…………………………………………!」



ふう、何とか生きていたか…。



「………………………」



唐突なのだか…。



俺は、念話能力者テレパスらしい(何か今、気付いた…)。


勿論、確定ではない。


単に、あのビキニ…金角女の方がテレパスで、思っている事を読まれてただけかも知れない…。



…はあ。


ちぇ!

とうとう俺もチート機能実装開始なのか?

転生チート無双ハーレム飯で勇者な異世界生活が始まるのか!

…と思っていたのになあ。


やはり俺には……特別な物語は用意されてないらしい。


………地道に行くか。



とりあえず現状は…。

あの女から一頻ひとしきり…ノーガードで暴行を受けて(縛られてるしね…。)…。


それが終わったあと…事もあろうに…。


さも「良い仕事した♪」みたいな顔で、俺を更にキツく縛り直したのだった…。


「……………………」


ふむ…。

この状況は、かなり不味いように思えてならない…。


どこかの見世物小屋にでも、叩き売られるのではなかろうか?

まあ、そういう娯楽文化があるかさえ…今の俺には分からんが…。



そんな取り留めない事を考えていると…。



女は、おもむろに背負い袋から出したフード付き外套マントを羽織る。

そして、俺の方を見下ろして来る。


ん?

何だ、やっぱビキニアーマーって恥ずかしい…。

みたいな共通認識があるんじゃないか。


「…あ」


あ……て、何?


「…べ、別に。あんたに言われたから、マントを羽織った訳じゃ…ないんだからね!?」



…………………………………はい?



「ま…街が近いからなんだからね!」



……街?

へぇ…そう。



何故か赤面して、がなり立てた彼女は ふと…。


「あと……ローテだから、アタシの名前…」


「……?」

……自己紹介?

何で、このタイミングで?


そう一方的に宣言すると、また俺を土嚢みたいに担ぎ…山道を下って行く。



「…………♪……………♪……」

何故か、女…ローテ嬢はご機嫌な、ご様子です。



……こ、怖い。


ヒステリックというか、情緒不安定な女性の扱いなぞ、俺は弁えてない…。

以前の記憶は無いけど、それだけは言える。


ウム。

分類学上、どういう扱いかは知らないが…。

俺は「非モテ」だったのだろう。


まあ、この話題はここまでだ。

何か凄く、切なくなるからな…。



とにかく、非常に高度な政治的理由によって…。

女性とのコミュニケーションに、多少の難がある俺には今の状況は、かなり持て余すモノだと言う事だ…。



ひょっとして、これは…この世界、もしくはこの地域での通常仕様なのか?

慣習とかなのか?

いくら何でも、ツンデレとか…そういうんじゃないよね?

あとで、デレるとかあり得ないんだよね?

ツンのみの片道切符で…以上オーバー(ピー!)、なんだよね?



「………………………………」



始めに、話し掛けようとして暴行され。

次いで…縛られ、吊るされ、揺らされながら今…俺は。

どこかに運ばれつつある。


正直、俺から見たらもうねぇ…只の山賊ですよ!

えーそうですとも…。


「黙れ」

はい、サーセン…。



そして、たっぷり一時間以上は坂道を下った先に広がった景色は…。


結構大きな街並が、あった…。



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