「クルマのなかでするのは、はじめてです」

 みっこさんの家を出たときは、もう8時を回っていた。

家には『遅くなる』と前もって連絡を入れているし、門限までには余裕で帰れるな。

そう思いながら、駅へ向かう角を曲がったときだった。


「あれ?」


見慣れたクルマが、道端に停まっている。

黒のTOYOTA Bb。

通り過ぎながら車内を見ると、ヘッドフォンをかけていたヨシキさんがわたしに気づき、軽く手を挙げた。


「おっ。初めて見るよ。制服姿! 凛子ちゃんってほんとに、現役JKだったんだな」

「えっ。そうですけど。どうしたんですか、ヨシキさん? こんなところで」

「凛子ちゃんを待ってたんだ。7時半くらいには出てくるかと思ったけど、居残りレッスンか?」

「レッスンのあとで、みっこさんとお茶しながら、いろいろお話ししていたんです」

「ふうん。ま、乗れよ。家まで送るから」


そう言ってヨシキさんは、助手席のドアを開ける。



「で。どんな話をしたんだい?」


クルマを運転しながら、ひとしきりレッスンの話をしたあと、おもむろにヨシキさんが訊いてきた。


「モデルの心がけの話とか… わたしのなぎなたや日本舞踊の話とか、いろいろです」

「オレの話とかは?」

「ヨシキさんの話ですか? いえ。特には」

「そう… ま。そうだよな」

「どうしてヨシキさんの話が出るのですか?」

「まあ、凛子ちゃんの彼氏だし、別に… 深い意味はないよ」


そう言ったヨシキさんは、信号が赤になってクルマが止まると、突然わたしの方にからだを乗り出し、キスをしてきた。


「ん… 運転中ですよ」

「シャワー浴びたんだな。いい匂いがする」

「レッスンで汗かいてしまいましたから」

「そのまま帰らない方がいいよ。鋭いお母さんなんだろ? 変に勘ぐられるぞ」

「そ、そうですね」

「軽く汗かいて帰ろうぜ」

「運動でもするのですか?」

「はは。石鹸の匂いもいいけど、オレは凛子ちゃんの汗の匂い、好きだよ。特に、脇の匂いとか」

「やだ。変態」

「脇からはフェロモンが放出されてて、男を誘うんだよ」

「そうなんですか? わたしも、ヨシキさんの匂い、本能的に好きなんです」

「はは。嬉しいよ」

「ほんとですよ」


そう言いながら、わたしはヨシキさんの肩に寄りかかり、シャツに顔を埋めた。

かすかに鼻腔をくすぐる、ヨシキさんの香り。

夏の匂いとあいまって、めまいがしそうになる。

気がつくと、クルマは人気のない河川敷で止まっていた。


「まだ時間あるだろ?」

「…大丈夫です」


もうわかっていた。

もちろん、わたしの準備もできている。

からだをひねって助手席のわたしに覆いかぶさってきたヨシキさんは、キスをしながら手探りでレバーを引き、シートを倒す。

そのまま首筋から肩、脇の下へと唇を這わせ、大きく深呼吸をした。


「クラクラする。甘酸っぱくていい匂いだ」

「…いや」


ブラウスのボタンを外したヨシキさんは、ブラをずらして胸のふくらみにキスをし、制服のスカートに指を滑り込ませると、ショーツの上からわたしのつぼみを探る。

やさしくひと撫でされるだけで、ピクンとからだが震えて、蜜が溢れてくる。


「あっ… いぃ…」


指先が敏感な部分に触れると、つい、声が漏れてしまう。

ひとしきり布越しに愛撫したあと、ショーツをずりさげてフリルをかきわけ、ヨシキさんはわたしの秘部をまさぐった。


「凛子ちゃんはすぐに濡れるな。ほら」


そう言いながらヨシキさんは、透明な愛液がじっとりと濡れそぼって光る指先を、わたしに見せる。


「いや。恥ずかしいです」

「この匂いがたまらないんだよ」


指先を自分の鼻に押し当てて深く息を吸ったヨシキさんは、恍惚に浸るような表情をした。


「もうっ。恥ずかしいです。変態!」


耳まで真っ赤にして、わたしはヨシキさんをなじったけど、ほんとは嬉しい。

不浄なものだと思っているようなものまで、愛おしんでくれて。


ヨシキさんの指だけで、わたしはてっぺんまで達してしまう。

ブラウスの前がはだけ、ブラがずれて胸があらわになり、たくし上げられたスカートからはだけた太ももの片方に、ショーツが引っかかってた淫らな格好で、息を荒げるわたしを、ヨシキさんは満足げに目で犯した。


「エロいよ凛子ちゃん。制服姿の凛子ちゃんと一度、してみたかった」

「ヨシキさん、変態のおじさんみたいです」

「ああ。いつでもどこでも、オレは変態になるんだよ。凛子ちゃんに対しては」


そう耳元でささやきながら、ヨシキさんはベルトを緩めてパンツを膝までおろし、わたしの脚の間に割って入っきた。

腕でからだを支え、体重をかけ過ぎないようにして、いきり立ったものをゆっくりと、秘部に沈めていく。

こんな狭いクルマのなかでするのは、はじめての経験で、いつもと違うシチュエーションに、余計に興奮してくる。


「クルマのなかなんて、はじめて。ヨシキさん… あっ」

「凛子ちゃんはなにもかも、オレがはじめてだよな」

「そう… ヨシキさんが、はじめて。なにもかも」

「全部オレの色に、染めてやるよ」

「ヨシキさん… 染めて。あっ、あっ、ああっ」


リズミカルな動きに合わせ、わたしの声も高まっていく。

おととい、彼の部屋で愛し合ったばかりというのに、またほしくなってしまう。

愛はどれだけ、貪欲なのだろう?


つづく

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