第14話エルミューラとお風呂で××。
――ここは王都にあるミラー伯爵家の屋敷――
「旦那様、今日のご予定は如何なさいましょう?」
「うむ、あの勇者がわしの前で見せた技術は到底使い物にならん。余程、火魔法をメイドに覚えさせた方が簡単であるしな。まさか900年も昔に風車を開発した国が、あの程度の事しか出来ぬとは――思いもしなかったわ。正直、あの勇者は使えない。隣の国の勇者殿は召還から半年でもう実績を積んでおると言うのに……目が節穴だったのは陛下では無く。わしの方かもしれぬな」
「では、勇者は――」
「ああ、もう一切の食事を切って良い。なぁに勇者が餓死しても陛下は深くは追求せんだろう。陛下の前であの様な態度を取ったのだからな」
「畏まりました。ではその様にメイドに伝えます」
∞ ∞ ∞ ∞ ∞
今日で、異世界生活も9日目。
魔法を取得した事で、井戸まで行かなくても顔も洗えれば、風呂も入れる。
これでトイレにお尻を洗ってくれる魔道具があれば――。
割と快適になるはずだ。
一足先に起きたのは、久しぶりに朝風呂に入る為。
日本に居た時は、眠気を覚ます為によく昼真から風呂に入ったものだ。
桜は健康的な生活を送っていたから、そんな俺に対し小言が多かったのだが。
ここには桜は居ないしね!
朝風呂に入りリビングで寛いでいると、漸くエルミューラが起きてくる。
エルミューラも俺と似ていて、生活はだらしない。
「おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん」
104歳も年上の幼女にお兄ちゃんと呼ばれるのもこの2日で違和感が薄れてきたな。
それにしても、やっぱ聞いた方いいよな?
結構、打ち解けている気もするし――。
思い切って聞いてみた。
「なぁ~エルミューラって人間か?」
「何をいきなり――それに、今更そんな事を聞いてくるのかしら?」
「だって普通の人間の寿命って100歳も生きられないだろう?」
「そうね、人族は生きられないわね」
「それで何で120歳なんだよ?」
「女に、しつこく歳の事を言うものではないのだわ」
やっぱり話したく無いのか……でも気になるよな。
異世界もので長寿の種族と言えば、エルフ、魔族。吸血鬼ってのもあったな。
それのどれかだと思うんだけど――耳が尖っていないからエルフは除外だろ。
そうなると――魔族か吸血鬼なんだよな。
「なぁ、魔族と吸血鬼のどっちなんだ?」
「それの――どっちでも無いのだわ」
「俺が知る限りでは、長寿の種族はエルフ、魔族、吸血鬼って決っているんだけど……」
「お兄ちゃんの、知らない種族だってこの世界にはいるものなのだわ」
「でも人間だよな?」
「それ以外に、何があるというのかしら?」
「ホムンクルスとかアンドロイドとか――」
「ホムンクルスは知っているけど違うのだわ。アンドロイドなんて聞いた事も無いのよ」
うん。
わからん。
話している内に、どうでもよくなってきた。
「じゃぁ、その話はいいとして――今日もスライムでいいんだよな?」
「ええ。お金を稼げる事がわかったのだから、ここで稼いでおきたいのだわ」
「お金が溜まったら、出て行くみたいなニュアンスに聞こえるんだけど……」
「お兄ちゃんとの生活は、とても楽しいのよ。そんな今更1人にはなりたくないのだわ」
「そうして貰えると、俺も退屈しなくていいかな――」
「お兄ちゃん、そこはせめて……お前が居なくなるのは寂しくなるから嫌だな。くらいの事を言って欲しいものなのだわ」
「本音を言えば、確かに1人じゃ寂しいからな――」
「後、一歩の所でお兄ちゃんはヘタレなのだわ」
「仕方ないじゃん。俺、女性経験が0の童貞だぜ?」
「そんな恥ずかしい話を、堂々と言わなくても言いと思うのだわ」
「童貞が恥ずかしいって!エルミューラは経験済みですか!その体系で?」
「そんな馬鹿な質問に――答える義務は無いのだわ」
「はいはい。そうですね――流石は俺よりも104歳年上の妹の言うとおりですよ!」
朝から、そんな馬鹿話をした後に朝食を食べいつもの日課をこなしに行く。
この林でスライムを狩り始め、トータルで200匹は狩っていると思うのだが、どこから湧いてくるのか一向に減る気配すら無い。
「なぁ~このスライムってのは何処から湧いてくるんだろうな……」
「そんなのは、次元の隙間からに決っているのだわ」
「俺の知っている知識では、魔素から生まれるものだと言う認識でいたんだけど……」
「人間の体を作るのが魔素であるならそうなのかもしれない。でも人間を作るのは人間の母親なのだから――その考えは間違っていると思うのだわ」
「それって都合よく、魔物だけが魔素から生まれるなんて事は無いっていう事でいいのか?」
「そういう事になるのだわ」
「他の魔物も異次元からやってきている?」
「そう思うわ。だからオークの様に繁殖力が強い魔物は次元の隙間からこの世界にやってきて、子孫を残していると言う説もあるのだわ」
「この世界には、ドラゴンとかもやっぱり居るのか?」
「居ると思うのだわ」
「じゃ~ゴーストとかも?」
「ダンジョンがある位だからいると思うのだわ」
「あるんだ――ダンジョン」
「確か……ずっとずっと北の国にダンジョン都市があったと思うのだわ」
「なぁ~その語尾にだわって付けるの改める気はないのか?普通に話せるよな?前に話していたし……」
「普通に話せるのだけれど、それでもいやだわ」
「何でだよ!」
「他の女の人と混同されない為には必要な事なのだわ」
「エルミューラも意外と苦労人なんだな」
「今頃気づいたのかしら?伊達に1人で旅をしてこなかったのだわ」
「――――――――」
そんな感じで、俺達は仲良くスライムを狩り続け今日も記録を更新した。
小声で――。
「またこんなに狩って来たんですか……」
「はい、宜しくお願いします」
「はぁ、わかりました。今数えますね」
「はい。お手数をおかけします」
「全部で98個ですね。金貨19枚に銀貨6枚です」
「はい。有難う御座います」
音量が戻る――。
「それじゃぁ~キラ君。明日も宜しくね!」
「はい!明日も今日ぐらい狩って来ますね!」
「期待しているわよ!」
「はい、では失礼します」
ギルドから出るとエルミューラが――。
「お兄ちゃんも、気苦労が耐えないのだわ」
「やっぱわかる?」
「魔石の相場がどの地点で下がるのか調査でもしているのかしら?」
「だって俺達が集めているのってスライムの魔石で緑だろ?何でそんなに緑の魔石が売れるのか気になるじゃん。赤と青なら一般市民も使っている所はあるからわかるけどさ」
「確かにおかしいわね――風属性の魔石で何をしているのか」
「あの風車も違和感があるしさ――風力発電でもしているならまだしも、王城の前にあんなもの建てた理由も緑の魔石にあると考えているんだよな」
「きっとそんな事を考えているのは、お兄ちゃんだけなのだわ。普通の人は、技術力を見せ付ける為と解釈するのだわ」
「見栄だけの為に、1月に1回は必ず壊れる風車を作るとは思えないんだよな」
「1月で壊れる話は始めて聞いたのだわ」
「俺も偶然知っただけなんだけどな――」
俺は、奴隷商への道を聞くのに鍛冶屋に立ち寄った話を聞かせた。
「それじゃ~鍛冶屋さんがあの奴隷商を教えなかったら、お兄ちゃんはエルとは会っていなかったという事なのだわ」
「そう言う事になるね」
「それじゃ~鍛冶屋さんに感謝しなければいけませんわ」
「その必要は無いと思うけどね」
「あら?なぜなのかしら?」
「そこの鍛冶屋が風車の壊れやすい部品を作っていたから、欠陥を指摘して壊れ難い方法を俺が教えたからな」
「それもさっきの魔石絡みなのかしら?」
「さぁて、どうなんだろうな」
俺は、苦笑いを浮かべながら、王城の手前にそびえ立つ風車を見つめた。
風車と魔石が関係あるなら、1ヵ月後には結果が出る。
風車が順調に稼動して魔石の価値がさらに上がれば、魔石を使って何かをしていると判断できる。
これで何も関係が無ければ、俺達が魔石で儲けるだけ。
「今日は何を食いたい?」
「毎日、肉も飽きるのだわ」
「それじゃ~魚料理が食える所かな?」
「肉と魚しか食べるものが無い様な言い方なのだわ」
「でもこの世界に米は無いし……」
「米が何かは知らないのだけれど、卵料理と言うのも美味しいのだわ」
「卵がメインの料理なんて俺は知らないんだけど」
「パン屋に行けば……」
「パン屋って普通は朝、焼いて夕方からは仕込みの時間じゃないのか?」
「――そう。それなら野菜炒めでいいのだわ」
結局、俺達はいつもの大衆食堂に行き――。
お持ち帰りの弁当は、肉を揚げたから揚げの様なものを選んだ。
お腹も一杯になり、小屋に戻ってくるといつも置いてあったパンは置いていなかった。
どうやら、あのチビ伯爵も諦めた様である。
「お兄ちゃん、今日はエルがお湯を作るのだわ」
「そうだな――俺だけ出来ても仕方が無いし」
「それじゃ~やってくるのだわ」
リビングで待っている内に、外の景色は闇に包まれていた。
「お兄ちゃん、暗くなっちゃったから一緒にお風呂に入って欲しいのだわ」
「――1人で入れるよね?」
「暗いお風呂なんて怖くて嫌なのだわ」
「魔力操作に長けているエルミューラが、中々戻ってこないと思ったら――エルミューラそれ狙ってやっている?」
「何の事かしら?分らないのだわ」
「ここの風呂は3人で入ってもまだ余裕があるから、入れるけど――いいんですかねぇ~」
「問題は無いのだわ」
何が、問題が無いのかは分らないが――誘われるままに一緒に風呂に入ると……。
エルミューラが、何時の間に購入したのか?
湯屋で使っているたわしと、洗剤を使って――俺の体を洗ってくれた。
真っ暗の中で、背中だけならまだしも、前まで洗ってもらった俺は……。
大きくなった息子を触られる前にさっさと風呂から上がったのであった。
ちなみに暗かったので。エルミューラの胸は見えていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます