0人目:担任
「つながったか。よし……第1回目の定時連絡を行う。通信機の状態に問題なし。手はずどおり現地の学習機関に職員として潜入することに成功。あらためて地球人として不自然とならないよう生活基盤を整えつつ、当惑星に潜伏中の逃亡犯の足取りを追う。以上」
「第2回目の定時連絡を始める。事前の現地工作員との情報共有に不備があったもよう。調査時間確保のため臨時教員としての雇用の予定のはずだが教務の主担当となっていた。注目を避けるため一旦は現状を維持する。手の空いたときで構わないが対応を願う。以上」
「第3回目の定時連絡を始める。逃亡犯の潜伏先の絞り込みに難航。やはり現地の正規職員としての業務に従事したままでは調査にかけられる時間に限界がある。前回も伝えたが早急な対応を願う。以上」
「第5回目の定時連絡を始める。現地の警察との折衝に感謝する。連携を開始。まだ情報共有段階だが、やはり行方不明者および外傷のない死体の数が異常とのこと。この地域で間違いない。引き続き調査を続ける。以上」
「予定時刻に遅れたが、これより第7回目の定時連絡を始める。テストの採点に時間がかかった。記入方法が今だに手書きという原始的な手段のため、回答の解読に……(咳払い)なんでもない。えー、警察との連携を継続。現場とおぼしき地点の情報を受領したので、独自に調査を行う。以上」
「第8回目の定時連絡を始める。各種現場は、潜入先の生徒たちの住居および通学路に近い地域も多く、情報収集に役立っている。潜入用の職種について、信用を得やすい教職員という立場は今後も有用かもしれない。以上」
「第10回目の定時連絡を始める。現場の監視カメラの映像および周辺住民の聴取から、不審な人物が何名か絞り込めた。引き続き調査する。以上……いや、追記あり。潜入先の雇用形態の変更は不要。この時期になっての急な担任の変更は生徒の負担となる懸念があるため。以上」
「第11回目の定時連絡を始める。遠からず交戦状態に入る可能性あり。軌道上の換装用スーツの座標登録を再確認願う。なお事前情報として、次回の連絡は遅延が見込まれる。定期テストの準備に入るため。以上」
「第12回目の定時連絡を始める。換装用スーツの地表転移テスト完了。装着には問題なし。ただ物陰で実行したが音の大きさが周辺住民の注意を引いたもよう。改良の余地あり。以上」
「第14回目の定時連絡を始める。やはり全ての現場に共通して姿を確認された人物は1人しかいない。容姿があまりに幼いため、これまでの聞き込みの際に、目撃者が無意識に証言から除外していたため、発覚が遅れたもよう。逃亡犯に気づかれぬよう慎重に対応する。以上」
「第15回目の定時連絡を始める。処分実行の担当変更申請、不可の旨、承知した。決行する。以上」
「第16回目の定時連絡。完了。警察側との折衝については本部に一任。以上」
「第17回目の定時連絡。帰還命令については、潜入先の仕事が一区切りつくまで保留を希望。必要な申請あれば一報願う。以上。なお、通信に遅延およびノイズが増加。通信機に問題は見られず。調査願う」
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