可憐で異能な生徒会長であるところの双子の美少女を救うための物語
こばとさん
#0
双子の美少女、天帝エクスと天帝マキナは生徒会長である。彼女たちが生まれ育った天帝家は、世界を征服しているといっても過言ではない、というか世界を牛耳る巨大グループであり、秘密結社でもなんでもない。天帝エクスと天帝マキナは、我らが天帝高等学校の自由のために、悪と戦うのだ――!
と、まあ、さて、さて。
そんな双子に呼び出しをくらった僕は、生徒会室に向かい廊下をひとり歩く。
朝一番、始業前、人もまばらな中、自分の教室からもう10分以上は歩いているのに到着しないのは、この校舎が、ずとんと郊外に建てられて放置されているようなショッピングモールほどにデカいからである。
各学年のクラス数が30もあるマンモス校。
都内において最大の生徒数を抱える高校ではあるが、世間的にとりわけ異常というわけでもなく、まあそもそも今現在、都内に高等学校は数えるほどしか存在していない。これは少子化なんかの理由で、多くの学校が統廃合された結果。
そんな天帝高等学校(ちなみに昨年度までの名称は都立第一高等学校)において、全生徒ならびに先生たちに強烈な印象を与え続け、まさにカリスマという形で存在しているのが、僕と同じ1年生の身でありながら生徒会長を務める、天帝エクスと天帝マキナである。
冒頭において、微妙に元ネタがわかりにくい初代仮面ライダーのパロディ文で説明した通り、彼女たちは双子である。日本人の血が半分だけ入ったハーフである彼女たちは、輝く金色の髪と焦げ茶色の瞳の持ち主で、そして何より、揃いの人形のように整った顔つきをした超超超絶美少女。
一年生であるにもかかわらず、全生徒の代表である生徒会長という役職に就いていること、そして本来は1人で務めるべき会長職を2人で執り行っているのは、彼女たちだけの特例である。というか、生徒会長という役職を抜きにしても、彼女たちはこの高校のルールそのものである言っても過言ではなく、下手をしたら国の法律をも捻じ曲げてしまうほどの権力を持っている。
なぜか?
いたって単純。
とはいえ彼女たちは、ただ僕たち庶民を掌握するために、その眼前に札束を積み上げていったわけではない。
彼女たちは、3年前、自分たちが中学生になった時点で、将来入学することを決めていたこの高校の教育環境を整えた。すなわち全国各地から優秀な人材を寄せ集め、高給を支払い、教育者としての教育を施した。そして既に勤務していた先生たち(の給料も倍増したらしい)と協力し、各クラスに担任の他に複数名の授業サポート教員をつけるなどした。僕らからすれば面倒見のいいお兄さんやお姉さんが、授業内外でいつでもサポートしてくれるという感じだ。それ以外にも色々なことを行っていて、教育環境を整えたというより、莫大な資金を投じて作り替えたといっても過言ではない。
双子いわく、高等学校までの教育なんてものは優秀な人材を雇えさえすればどうとでもなる、すなわち金さえあれば解決する、とのことだ。小中学生の諸君、覚えておくといい。
ちなみにその
朝日を浴びて輝く廊下。窓ガラスから見える壮大な学内施設を見ながら思う。
ああ、この高校に入学してよかったなあ、と。
その想いを僕だけではなく、生徒全員が共有しているからこそ、彼女たちには頭が上がらず、2人で生徒会長を務めるという、まあ言ってみればその程度の特例が認められているというわけだ。
ふと時計を見ると、約束の時間まで間もなく。
ほっほっ、と、駆け足を始める僕。
偉そうに語ってみたものの、僕自身、彼女たちと話したことはなかったり。
故に、彼女たちに呼び出されてからずっと、この時間を楽しみにしてたりする。
呼び出された理由?
聞いてない。ただ、今日のこの時間に来なさい、と、そう通達されただけだ。
たぶん、お説教を喰らうことになると思うんだけど……場合によっては何かしらの罰を受ける……いや、ひょっとしたら、逆かも……?
ま。
考えても詮無いこと。どうせすぐわかることだし。
生徒会長が、僕の、あの行為を、どうジャッジするのか。それも楽しみだ。
確かに彼女たちは生徒会長という役職にあって、この高校においては、かなりの権限は持っているけれど、それでもやはり生徒としての範囲であって、いきなり僕のことを停学にしたり退学にしたりなんてことはできないだろう……たぶん……きっと、うん……けど、辞めさせられるのはやっぱヤだな……
ま……そんなことはないだろうと、信じたいところである。
そう、あくまで彼女たちはこの高校の生徒であって。
従って生きる者であって。
何だかんだで普通の高校生としてこの学校で過ごしている。
普通に友達もいると聞くし、ま、金持ちならではの失敗談を側聞したりもするけれど、それはそれで微笑ましい感じ。
そんな彼女たちが、同じ高校の生徒である僕のことを……
と。
気付けば、目前には高校内にあるとは思えないほど立派な木製の扉。
赤銅色の看板に描かれた文字は、生徒会室、である。
ふうう……と、深呼吸して、緊張緩和の努力をする。
けどやっぱり、どきどきする。
こんなに緊張するのは、2年前、好きな子に告白すると決意したとき以来か。
僕は、手のひらに人と書いて、ごくんと飲み込む振りをした。
……本当に効くんだろうか、これ。
いやまあ、うん、勢いでいこうじゃないか。
こんこんこん! と、覚悟を込めて、僕は強めにノックした。
「「どうぞ」」
細くてなんだか機械的な、それでも温かい感じのする、ふたつの声が返ってきた。
僕は言われるがままに、ドアを開けた。
ぱあっと、暗闇に光が射しこんでいくかのように。
その先に感じるのは、神々しいほどの、ふたつの気配。
僕の緊張感は最高潮で、背筋が寒いし、鼓動はうるさいし。
うん、大丈夫……ふたりとも、普通の高校生で、普通の女の子なんだ、と。
僕は覚悟を決めて、えいやと部屋に入った。
とはいえ、まあ、ふたりとも。
普通の人間では、ないのだけど。
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