笑いで世界を救え!
歌羽
第1話 波乱の始まり
「はぁ……。」
今後トラウマとなるであろう会場を後にし、重い足取りで帰路に着く。
俺、笹原ショウは日本一の漫才師になるため、某お笑い事務所の養成所に入っていた。
いよいよ卒業、さぁこれから本格的に活動していこう、というところで、コンビを組んでいた友達に裏切られた。
「すまん俺、別のやつとコンビ組みたいねん……。ちゃうやろ!!!せめてもっと早く言えやクソが!!!」
おかげで俺は今日からめでたくピン芸人となってしまったわけだが、正直どうしたらいいかわからない。
落ちている小石を蹴飛ばそうとして出した足は虚しく空を切った。
「⋯⋯俺はあいつと漫才して、お客さんばんばん笑かすつもりやってんけどなぁ。あいつは
つい、らしくもなく弱音を吐いてしまう。
こんなんじゃダメだと、俺は自分の頬を思い切り叩き、無理やり気持ちを切り替えた。
「コンビかどうかなんは関係ない!俺は日本一おもしろくなる男や!!」
気合を入れるため、そう叫びながら家までの道のりを全力疾走する。
突然、地響きのような音が聞こえ、すさまじい衝撃が俺を襲った。
「なんや!地震か!?」
周りを見渡すと体長10mはあるであろう怪獣らしき生き物が立っていた。
「なんやねんこいつ……。幻覚か?」
俺は逃げるため、前に向き直ろうとした。が、腰が抜けてしまい、地べたにしりもちをついた。幻覚でも怖いもんは怖いらしい。
怪獣はさらに近づく。完全に俺にほうを向いている。
そして目が合う。その瞬間、俺の中の何かがプツリと切れた。
「……でやねん。なんで俺がこんな目に合わなあかんねん!こんなしんどいんは一回で十分や!もうええわ!!」
その瞬間、怪獣が消えた。
「え、どういうこと?」
思考が追い付かないまま10分が経った。
「……あほくさ。帰って飯食お。」
あの怪獣はストレスのせいで見えた幻覚だ。あんなに騒ぐことはなかったのだ。
我に返りそう思った俺は、今度は黙って家路についた。
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