咲野の日常。
@thought
第1話始まりはいつも突然だなあ。
「世界が想像で満たされれば良いのに。」
少女は言った。飛び立つ瞬間に空気を切り裂くように戦慄が走る。
「イタッ。」
少女が左肩を押さえる。押さえた肩から血がしたたり落ちる。
「ピリリリッツ。」
少女が目覚ましを止めた。
「夢かあっ。」
生あくびをしながら両手をううんと天井に伸ばした。少女は高校二年生、如月咲野、きさらぎさくや。ガランとしたアパートに母親と二人住まいだ。母親は如月木ノ葉、きさらぎこのは。木ノ葉がフライパンにある目玉焼きを皿に移しながら、フライパンを鳴らす。
「ガンガン。」
「咲野、起きなさい。ご飯よ。学校よ。また遅れるわよ。」
ガンガン。うるさいなあっ。叩き起こさないでよ。まだ夢みたいのよ。さあ、二度寝しようっと。ガンガン、気のせいかフライパンが近づいてくる。ガングアン。
「さあくうや。」
布団をはぎ取られた。
「起きなさい、咲野。ご飯冷めちゃうわよ。どうするの。やっと二年生になれのに。通信制だからって遅刻は許さないわよ。」
時計の針がチクチク音をたてる。チクチク・・・ああ!スクーリング。チクチク。てチクチクじゃない。咲野は目覚まし時計を持って飛び起きた。
「あああああ!今日スクーリング!お母さん、何でもっと早く起こしてくれんかったの。」
大急ぎで身支度をする。
「知らないわよ。通信制は自分でするって言ったでしょ。」
木ノ葉はまたかという感じだが、咲野の準備していたらしきスクリーングセットを鞄に詰めていく。
「お母さん、筆箱!教科書!スマホ!ウォークマン!お弁・」
咲野が言い終わると同時に弁当箱が咲野の目の前に出された。
「はい!お弁当。今日もしっかり食べなさい。」
木ノ葉は静かな微笑みと同時にキッチンへ促した。ちょっとした嵐のように咲野は何もかも吸い込んでいく。ゴオオオ。
「咲野、もっとゆっくり食べなさい。」
木ノ葉はやれやれと首を傾げ、朝食の後片付けをし始めた。
「お母さん、もう仕事行くからね。咲野、今日バイト何時から?」
嵐咲野が答える。
「今日はことりちゃんと約束しているから、お休みもらった。」
ここはとある、宇宙の教室。生徒たちが静まり返って女性教師を見つめている。
「・・・あるからして、未だ宇宙は解明されていない星々があります。しかし、私は言いたい。」
女性教師は左手に力を込める。
「なぜ、あなたたちはそう比べるの?体には様々な臓器があります。心臓、脳、腸等。体はこの星と一緒。脳と腸の臓器の役割を比べたってしょうがないわ。だって役目が違うもの。脳も腸も他のパーツも皆大事なの。あの人が素晴らしいなんて比べたってしょうがないわ。脳と腸を比べたってしょうがないでしょ。」
女性教師はまくしたてるように話したの息も切れ切れだ。
生徒たちは半ば呆れている。
教室の隅で咲野はボーっとしている。シャープペンシルを手の中でクルクル遊ばしている。
「咲野、さくやあ。」
髪の長い女性が立っていた。
「あ、ことりちゃん。」
彼女の名前は羽芝小鳥、はしばことり。25歳の高校生だ。
「久しぶりの学校なのによくボーっと出来るわね。」
ドカアッと咲野の前の席に座った。
小鳥は常々言う。
「けど、25歳にもなって(ことり)はないわよね。書類提出する度にはあ?て顔されるのよ。親もどの顔見て付けたのよ。」
小鳥は長い髪の毛をクルクル器用に人差し指に巻き付けていた。
咲野もその度に思う。(ことり)より(羽芝家)にビックリしてるんじゃないのかと。羽芝家はこの地域の事業を一手に引き受けている財閥だ。小鳥が産まれた時はローカルテレビが取材に来たほどだ。
咲野の日常。 @thought
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