第7話2018年3月
このころまで、私は多種にわたる接客業の求人に応募していました。
ホテルフロント、アパレル販売、携帯電話販売員。どれもが残念な結果でしたが、私は企業さまに感謝しています。
運命の求人に出会えたのですから。
半分期待、半分諦めでハローワークの求人票を閲覧していると、とある文字が目に留まりました。
「保険相談窓口係」
こちらは私が頻繁に利用しているショッピングモールの中にテナントを借りている会社であり、加入している生命保険や家計の相談などを受け付けているとのことでした。
気付けば、私はその求人票を印刷していて、鞄の中にしまい込んでいました。
福岡県に本社を置いている、九州では大手なので、経験者専用の求人であったかもしれないというのに。
それでも文字を流せないのは、私の諦めの悪さによるのでしょう。
文字という、高い木に実る果実を力ずくでもぎ取るように、私は一字一字を凝視しました。
そのとき、私は幸運だったのでしょう。業務経験の有無は問わないとのことでした。
必要な資格は、高校卒業のみ。
しかも、しっかり研修などもされていると記されていました。
これは応募するしかないと思い、私は翌日重い体をどうにか転がしてハローワークにて紹介状を発行していただきました。
こちらは事前に書類選考があったので、紹介状、履歴書、職務経歴書を送付しました。
正直に申し上げると、私はこれまでの求人応募にて志望動機を記す際、我ながら薄っぺらく胡散臭い、言葉とは言い難いことばだと思っていました。
それが、どういうことか、こちらの求人に関しては、自然と言葉が溢れてきました。
また、自分を偽る必要がなく、印刷して始めて気付いたのですが、入社の際はファイナンシャル・プランナーの資格取得を念頭に置いている、という文字がしっかりと刻まれていました。
パソコンやプリンターは人間の身体的表現ではなく、精神をそのまま表現するものなのかと疑ったのは、このときが最初で最後でしょう。
さて、肝心の書類選考の結果は、送付して僅か四日後に電話を介して届きました。
選考に七日ほどかかると求人票に記されていたにも関わらず。
書類選考、突破です!
私は嬉しさと信じられなさで、買い替えたばかりのガラケーを三十分ほど握り締めていました。
当時私を悩ませていた親知らずによる歯痛など、このときだけは忘れていました。
抜歯なんて、屁だからね! そう勝ち気になるほどでした。
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