魔術師 準備する。
「で、学院では何を教えれば良い?先に言っておくが死霊術や錬金術は扱えるが、学院で講義出来るレベルじゃないぞ。」
仕事内容の確認は大事だ。何を教えるかによって持っていく荷物が代わる。
「レリック様に講義していただくのは基礎魔術です。」
「基礎魔術だって?そんなの卒業生なら誰でも出来る講義じゃないか。それなのに教授待遇で私を雇うだと?」
基礎魔術は学院の全ての学科での必須科目だ。商人だろうと騎士だろうと最低限の魔術を修めて無ければこの世界ではやっていけない。そのため、学院では全校生徒に最低限の魔術を教える科目を用意した。それが[基礎魔術]だ。
それをわざわざ教授待遇で冒険者を雇う何て裏がありますと認めるような話だ。
「レリック様には魔術研究を中心に活動していただきたいのです。
レリック様の採用理由の一つ、王国魔術書に認められた特許魔術ですが、あれは実践的かつ新たな火属性の可能性を広げた魔術です。あのような革新的な魔術を学院で開発して欲しいのです。」
なるほど、だから基礎魔術か。基礎魔術なら特に準備もせず講義を行える。魔術開発が目的なら教授として迎え入れて欲しいが大方教授達に大反対されたんだろう。
「なるほど、だから講師で基礎魔術か。了解した。いつまでに学院に向かえばいい?」
「そのことなんですがレリック様の特許魔術が盗用されていた件と爵位の授与を行うために一度王都に向かっていただき、それがすみ次第、学院に来ていただきます。開講は来年度からの予定ですので、三ヶ月程猶予があります。」
話を聞くと、私の特許魔術の使用契約の更新をしなければならないらしい、私からしたら勝手に結ばれた契約だからぶち切ってもいいが、それをやるとかなり王国の経済は打撃を受けるらしい。
また、二年間の特許魔術で稼いだ金を賠償として受け取れるらしい、爵位の授与も含めて全て王城で行うみたいだ。
「わかった、学院での環境に早く慣れたい明日の朝には王都に向かうとするよ。」
「それでしたら学院の馬車で王都まで送りましょう。実は、王国と学院から王都までレリック様の世話をするように申し付けられていますので。」
学院はともかく王国からとか政治の匂いがしてくるが、触れるのは辞めることにした。レリックに政治はわからない。
彼女を見送った後、出発の準備は直ぐに終わった。持っていく物は自作の魔術書と拳銃だけだ。それ以外の物は学院で手に入るだろう。
旅行鞄一つに納めて、研究室は封印した。
後は、冒険者ギルドとラッセンにこの街を離れる事を伝えるだけだ。
冒険者ギルドには活動休止の届けを提出して終わりだった。
ラッセンには餞別として秘伝のタレが入った壺をくれた。
「旦那!そのタレに浸けて焼けばどんな食材だろうと美味しくいただける!向こうの飯が合わなくても何とかやっていけるぜ!
タレが無くなったら直ぐにこの街に戻ってきてくれよな!新作料理と一緒に補充してやるよ!」
タレが無くなったら戻ってこいとはラッセンらしい。
こうして私は王都に向かう準備を終えた。
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