けものフレンズ掌編集
かわらば
再会
私はオオアルマジロ。ヘラジカ様の部下として、日々へいげんでライオン達と戦っている。
ある日、ヘラジカ様が面白いものを持って帰ってきた。何でも、タイリクオオカミが描いた「マンガ」というもので、絵を見て物語を楽しむものらしい。
マンガには、「ギロギロ」と呼ばれる、とがったウロコのついた尾とそれに似た毛皮のフレンズが描かれていた。
私はそれを見ると何故だかとても複雑な気持ちになった。記憶にはないものの、とても懐かしく大事なもののように思えた。「私は何か大事なものを忘れている」本能がそう告げていた。
私は記憶をたどり、この気持ちの手がかりを探した。すると、1つだけ関係のありそうなことを思い出した。
私がフレンズになったばかりの頃、たくさんのフレンズが会いに来てくれた。その中に、ギロギロとよく似た姿のフレンズがいたと思う。彼女は私とすれ違いざまに「さよなら」とだけ言って去っていった。
何の面識もないフレンズがそんなことをするとは思えない。やはり、私とその人には何かがあるに違いない。
詳しく調べるため、私はギロギロの作者であるタイリクオオカミのところへ向かった。
「先生の『ホラー探偵ギロギロ』、読みました。それでお聞きしたいのですが、ギロギロのモデルとなったフレンズはいるのですか?」
「お、いい質問だねえ。私も直接見た事は無いんだが、昔、パークにはとある『何でも屋』がいたらしいんだ。その子の名前は、オオセンザンコウのセンちゃんって言って、受けた依頼は必ず達成するって噂だったらしい。その子がモデルだよ」
「オオセンザンコウ…センちゃん…」
なぜかその名前も、とても懐かしく聞こえた。
私はお礼を言って、タイリクオオカミのいるロッジアリツカを後にした。
私が見たのはそのオオセンザンコウという方なのだろう。だが、相手の名前がわかっても根本的な解決にはなってない。そこで私は、他の人達にも聞き込みを行った。しかし、帰ってくるのは
「聞いたことがない」
「知らない」
といった答えばかりだった。
しかし、聞き込みをしていると、なぜか妙な既視感を覚えた。そしてそれは回数を重ねるごとに強くなっていた。
度重なる聞き込みの失敗に、半ば諦めかけていた時、情報屋を自称するフレンズ、ターキンに出会った。彼女曰く、
「じゃんぐるちほーの中の洞窟に今も住んでいると聞きやしたぜ」
初めて手がかりがつかめた。
私は思わず駆け出した。
走りながら、脳内で情報を整理した。
探しているのはオオセンザンコウのセンちゃん。彼女は何でも屋をやっていた。生まれた当初の私に会い、「さよなら」とだけ言って去った。
1つ情報を整理するたび、幾つかの思い出が蘇る。悪魔の花、ハナリアンを討伐したこと。調子に乗ってジャパまんをたくさん買ったら叱られたこと。共に伝説の神獣、青龍と戦ったこと。そして私たちの決め台詞ー…
「2人で1つのダブルスフィア」
意図せずに、私はその言葉を声に出していた。
どれだけ走ったのだろう。いつの間にかじゃんぐるちほーまで来ていた。しかし速度を落とすことなく、私は走り続けた。今の私は、自分がかつて何者であったかをはっきりと思い出していた。ヘラジカ軍勢の1人では無い。何でも屋「ダブルスフィア」の守り担当、オオアルマジロのオルマーだ!
そしてとうとう、センちゃんのいるという洞窟の前までたどり着いた。
もう夕暮れ。西日が洞窟の中の彼女を照らし出していた。
「おかえりなさい」
彼女はそう言って、優しく微笑んだ。
END.
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