第1話~少女~

「幸福になろうとするな、それよりもいかに不幸をいかに回避することができるかが大事だ」

それは父さんが言っていた人生における立ち回り方だ


「幸福をつかむの大変だが不幸を回避するのはそれよりも幾許か簡単だ」

これも父さんから聞かされたことだ


父親は平穏無事な起伏のない人生を過ごそうとしていた

こんなこと言うのはおそらく母さんが関係しているのだろう

母さんは俺が小さい時に亡くなった

俺は母さんとの記憶がほとんどない

顔も全く思い出せない、なぜ死んだのか父さんは

一切教えてくれない、理由はわからない


もしかしたら教えてくれないのは死因の原因が

俺にあるからかもしれない

俺に原因があるならば俺は間違いなくショックを受けるだろうし、

それを気遣って話さないのかもしれない

もしかしたら父さんに原因があるのかもしれない

もし父さんに原因があれば俺に恨まれるかもしれない

とか思って話さないのかもしれない・・・

もちろん故意じゃなければ父さんを恨むわけないけど


なんにせよ父さんが平凡を望むのは母さんの死が関係しているのだろう


しかし平凡ね・・・・・・・・・





「平凡どこいっただあああああああああああああ」

俺は町の少し雪のかぶった草原で、出せるだけの大声を発した

通行人にが怪訝そうな感じでこちらを見るが俺はあまり気にしない

気にしている状況ではない、なぜかって?

そりゃ異世界に来ちまえばそうなりますよ

なんだよ異世界て?そりゃないぜ?

いくらパーフェクトヒューマンといえどこれは

動揺しちゃうぜ・・・・・・・・・

こういう日は寝るに限る! 寝よう

俺は寒空の下、草原に寝そべった

しかしあれから2週間か・・・・・



2週間前


「みんなどうだった?」

集会所で回復薬を配っていた青年が問いかける

「どれこれもないですよ・・魔物を倒したんですけど

なんかおかしいです 普通倒した魔物は消滅するはずなんですけど

いつになっても消えないんですよ」

一人の少年ががそういうと「俺もそうだ」

「私も同じことが・・・」という声が周りから聞こえてくる

無論俺たちもも同じ現象に遭遇しているさて俺も報告

しなくちゃいけねーな


「みんなはメニュー画面は開けるか?そもそも開くボタンは存在するか?」

俺はそんなこと問いかけてみる 

みんなが一様にメニュー画面を開こうとするが誰も開くことができない

やはりみんな同じみたいだな・・こりゃもう確定的だ

ここは現実世界で作り物ではない


そのあとも色々意見が交わされたそれはどれも

この世界は仮想現実ではないと意見を固めるには十分だった








「う~~~~ん」

俺は重い瞼をこする

どうやら思い出してるうちに寝てしまったらしい


「しゅんた・・くん?」

どこから透き通った綺麗な声が俺の名前を呼んでいた

「ん?だれ・・・」

俺が仰向けになると美しい凛とした少女が俺の顔を覗き込んでいた

人間の耳がある所には獣耳らしきものがついていて

そのうえしっぽも生えていた

その部分以外は人間と同じであったので彼女は半獣人であること確定だ


しかし綺麗な少女だ 腰まで伸びたポニーテール

髪の色は黄褐色とでもいうのだろうか

そしてそのきれいな見た目にそぐわない

2本の剣を腰に差していた、


しかし先ほど俺の名前を呼んだようだが、半獣人である以上

転移してきた人間ではないこと確定だ

つまりこの世界の住人ということになる。

しかしここの世界の住人で俺の名前を知っている人など

ほとんどいないだろうし、下の名前で呼ばれる間柄の人

など一人もいない、寝起きだし聞き間違いかもな


「いや・・・いるわけがないもうあいつは・・」

なにやら少女は言っているがよく聞こえない

「あの・・なにか用か?」

「いやすまない・・君に昔の友人の面影があった

のでな、まさかと思い声をかけた、すまない

どうやら違うようだ。失礼する」

「そうですか・・・」


少女はそのまま背を向け帰ろうとした

少女が背を向けると尻尾がぶらぶらと動いていた

その時俺にある衝動が芽生えた

つかみたいという衝動だ、動くものに反応してしまうのは

動物の本能的なことで仕方がないのだ・・そう・・どうしようないのだ


俺は本能のまま少女のしっぽつかむ

「にゃあああああああああ?!?!」

少女がなんとも可愛らしい声を上げる

「すまないな少女よ本能には逆らえなかったようだ

どうか俺のこと許してくれ」

俺は深々と頭を下げた。まあこれで許してくれるだろう

しかし俺が顔上げると・・・・・・


半泣きでこちらを睨みつけている

そうして腰にある剣を引き抜いた

「ただで済むと思うなよ・・・・」

少女からは殺気が満ちている

「いやこれには深いわけが・・・・・」

俺は必至弁明するが少女の耳には届いていないようだ

「しねええええええええええええ」

少女が繰り出したと思えない素早い突きが

次々と繰り出される

俺も刀を引き抜き必死に突きを防ぐ


「なんというう突きの速さだ・・・突く,刺す

という次元はるかにを超えている・・」

いつの間にそこにいた健太が解説を始めていた

解説より助けてくれよ・・・・・・

しかし防戦一方では埒が明かない

幸い相手は怒りのあまり体が前に出すぎているうえに

突きはどれも単調なものばかりだ

俺は半身になり相手の突きを受け流す

相手のバランスが崩れたところで

小手に刀の頭を叩きこむ

すると少女の手から剣がこぼれ落ち

俺の勝利が確定した


「ぐぬぬぬうううううう」

少女は先ほど打撃を与えた箇所を抑えている

強くやりすぎたか?なにせ全力で打ち込んだからな・・

俺は少女に駆け寄った

「すまないな強くやりすぎたか?」

俺は心配そうに顔を覗き込むが

俺のことこれでもかと睨みつけた

「やはり君があいつのわけないな・・・・

次に会ったときは覚えておけよ・・」

「お・・おう」

「名前は?」

「なまえ?」

「そうだ君にの名はなんだ」

俺は胸を張ってこういった

「パーフェクトヒューマンさ」

「よし覚えた!私の名はリーナ・フリード

決して忘れるなよ」

忘れるわけないだろさっき殺しかけられたんだから。


「覚えておけよーーーー」

少女はそう言いながら去っていった。



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