第33話 リスクだらけの勝負2

「それじゃあ、僕達の勝負内容を発表するぞ」


 翌日の早朝。いつも通り習志野と一緒に教室に入ると、既に登校していた東海と浮島がこちらに寄ってきた。

 俺と習志野と向かい合う位置で東海・浮島がいる。

 そして、それを囲むようにクラスの連中の多くがギャラリーとして集まっている。


「昨日言った通り、勝負は今度の中間テストの点数で勝負する」

「ああ。そんなこと言ってたな」

「しかし、普通にテストの点数で勝負しても氷室君がいる以上、僕達が勝てる可能性は高くない。――そこで、少しゲーム性を付け加えてみた」


 ここまでは、まぁ、予想の範囲内だ。

 昨日調べたところ東海・浮島ペアの成績は現在クラス29ペア中17位。二人とも学力は低くはないが、せいぜいクラスで半分より上というレベルだ。

 いくらクラス最下位の習志野がいるとはいえ、学年3位の俺がいるんだ。しかもこの前のオリエンテーションで習志野もやればできることが判明した。

 そんな勝てる見込みが少ない相手に普通の勝負を持ちこむ程、こいつらもバカではないだろう。


「勝負は各ペア5枚のテストを用いて行う。まず――」


 東海が淡々と勝負のルールを説明していく。


~中間テスト勝負ルール~

①テスト返却後、各ペア5教科×二人分、10枚のテストの中から好きなテストを5枚選択する。※基本的に誰のどのテストを選択してもいいが、氷室・習志野組は氷室のテストを最大2枚までしか選択できないものとする。

②選んだテストは相手ペアには見せず自分達の手札とする。

③互いに自分達の手札から一枚ずつ好きなテストを選択し点数を争う。

④点数が高かった方の勝利。

⑤③~④を最大5回繰り返し、先に3勝した方の勝ちとする。


「ルールは以上だ。ちなみに替え玉とか普通のテストで禁止されてることは勿論なしだ。――何か質問とか不満は?」


 一通りルール説明を終え、東海がこちらに問いかけてくる。

 なるほど…。ある程度予想はしていたが、やっぱりこれくらい不利なルールにはなるか…。

 いくら俺が高得点を叩き出しても俺のテストが使えるのは2枚まで…。つまり、最低でも1回は習志野がこいつらに勝てなきゃ俺達の負けってことか…。

 習志野の方へと目を向けると、このルールから自分が勝敗を左右するということに気付き、不安そうな表情を浮かべている。


「安心しろ。無駄にお前が気負う必要はねぇ。――お前はとにかく自分のベストを尽くすことだけ考えとけ。あとは俺が何とかしてやる」

「はい、ありがとうございます」


 不安そうに俯く習志野の頭をクシャっと不器用に撫でながら励ましてやると、習志野はほっとしたような顔ではにかんだ。


「……質問はないってことでいいのかい?」


 思いの外余裕そうな俺の態度を見せられた東海は少しイラついた様子で再度確認してくる。


「あぁ。別にいいぞ」

「それじゃあ、勝負はテスト全教科のテストが返却された日の放課後に行う。――余裕でいられるのも今のうちだ」


 そう言い残して東海は不機嫌そうに教室を出ていく。そして、その後を追うように本日一言も発しなかった浮島も退出していく。

 ――っていうか、浮島いたのか…。あいつ無口にも程があるだろ…。


キンコーンカーンコーン


 そして、いいタイミングで鳴ったチャイムを合図にギャラリーのクラスメート達もこそこそと会話しながら、それぞれ自分達の席に戻っていった。


(そういえば、こいつらずっといた割には珍しく静かだったよな…。勝負内容聞いた時も反応薄かったし…)


 そんなクラスメート達に若干の違和感を感じながら、俺も自分の席に着いた。


「さぁ、どう攻めるか」


 俺は一人呟き、頭の中で策を考える。――再び負けられない勝負に勝利するために…。

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