恋愛サバイバル~卒業率3%の名門校~

沖マリオ

第一章

第1話 プロローグ

「ねぇねぇ、私、大きくなったらタッくんのお嫁さんになってあげるね」


 小さな少女は元気な声で男の子に笑顔を向ける。

 子供のころの結婚の約束――仲の良い幼少の男女ならそれほど珍しいやり取りではないだろう。むしろ、ありふれている出来事と言っても過言ではないくらいだ。

 しかし、この二人に関しては…


「いや、遠慮しておく」


 部屋に転がっていたサッカーボールをいじくりまわしながら素っ気なく答える少年。その表情は平静そのもので、幼少の男子特有の照れ隠しで拒否しているわけではない。


「え~!なんで~いいじゃん!結婚しようよ~」


頬を膨らませながら少年に詰め寄る少女。


「いや、だって、ここで勢いのままに約束しても、将来お互いに結婚したいと思ってるかわからねぇじゃん。俺そこまで責任持てねぇし」


そんな少女に少年は、幼稚園児とは思えない冷静で現実的な意見を淡々と浴びせていく。


「私は大人になってもタッくんのこと好きだもん!!」

「お前は好きでも俺は好きじゃないかもしれん」

「えー!?…もしかして、たっくん……私のこと嫌いなの…?」

「いや、嫌いじゃないけど、結婚したい程好きかと言われると、そうでもない」

「う~…」


少年に容赦なくバッサリと切られた少女は涙目で唸る。

が、しかし…しばらくして少女は自分の袖で涙を拭い、すくっと立ち上がると、


「よし、決めた!私、絶対たっくんと結婚する!!」

「いや、だから…」

「絶対に大人になるまでにたっくんのことメロメロにしてみせる!!」


ヤル気に満ちた表情で高らかに宣言してみせた。

一方、それを目の当たりにした少年は静かに嘆くのだった。


「普通に結婚の約束しといた方が良かったかも…」


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