練習場

犬子蓮木

to sleep or not to sleep

 とてもねむい。

 お昼過ぎまで眠り続けて、それからまた仮眠を取って、夜なのにお昼寝をする。それでもどうしても眠くて、目を覚ますと夢を見ている。

 眠っている夢を見ることがある。

 夢の中の夢を見たこともある。

 ネストは何回まであるだろうか。

 もしくはどれも同階層だろうか。

 朝が来た。

 僕は、ゆっくりと時間をかけて体を夢から覚ましていく。眠っていたら活動できない。駅へ行くことも、電車に乗ることもできない。乗ってしまえば眠れるのだけど、満員電車で立っているとそんな自由が与えられることはない。

 人の波に揺られて、吐き出されて、また人の集まる建物へ入る。

 体はまだ半分ぐらい眠っている。

 半分ぐらい眠っていても活動できるのだから素晴らしいと思う。

「おはようございます」

 窓の外にモンスターが歩いているのが見えた。

 どうやらまだ世界が寝ぼけているらしい。


 お昼。机につっぷしてお昼寝する。

 まわりの声が暗闇に聞こえてきて、いつのまにか消えていって、それから別の世界で立ち尽くしている。

 みんなが机につっぷしてお昼寝していた。

 すやすや、ぐーぐー、寝息やいびきをたてている。

 それなに、どうして僕は起きているのだろうか。

 僕も眠らなくちゃ。

 急いで席に座り、腕の上におでこを乗せる。声は聞こえない。みんなが寝ている音が聞える。眠れなかった。いつもならどんなに騒がしいところでも眠れるのに。

 笑い声が響く部屋でも、

 ごーごーと音をたてて進む地下鉄の中でも、

 目覚まし時計が鳴り響く朝でも、

 どこでだって眠って見せるのにいまはどうしても眠れなかった。

 

 こんなのっておかしい。だけど冷静になってみればわかる。これは夢だ。でないとこんな風にみんなが眠っているなんて状況はありえない。

 僕はわざと音をたてて立ち上がった。

 それでもやっぱりみんなは目を覚まさない。

 隣の席で寝ている人間の腕をひっぱりだしてもちあげてみた。

 それでもやっぱりすやすやと寝息をたてている。幸せそうでムカつく寝顔だった。

 僕には眠気がまったくない。

 眠りたいのに眠れない。

 不眠。

 目が民に不成。

 室内から外にでた。外でもみんな眠っていた。通りすがりの人たちが道端のそこかしこで眠っている。車の音のない静かな世界。

 犬も猫も眠っていた。否、それは普通かもしれない。

 でも、鳥も眠っていた。

 でも、僕は眠れない。

 焦って、つらくて、どきどきして、くるしくて、目を覚ました。夢だった。わかっている。あんなのは夢に決まっている。

 顔をあげる。

 きょろきょろと首をふる。

 周りの席で、みんなが寝息を立てていた。

 目を瞑って考える。

 これだって、もちろん夢に決まっているさ。

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