ダンジョンに戻ると、懐かしい顔があった。

コイツは頭脳労働担当と明言し、一度も戦っている姿を見たことがないから、生き残っているとは思っていたが、やはり健在の様だな。

「レオ～ン、ひさしぶりじゃな！」

小柄な青白い肌のエルフ、いわゆる青銅のエルフの女性が飛びついてくる。そして、そのまま額を合わせて、精神干渉の魔法をかけてくるが、抵抗する気も無いので受け入れる。

「ほぅ、ほー、面白いのぅ」

地球にゲートで転移する前にスカーレットにおこなった記憶の譲渡の逆で、今まさに俺の35年間が読み取られている。

元々、この精神干渉による記憶の受け渡しの魔法は彼女、リーゼロッテが編み出したもので、“いちいち言葉で説明するのが面倒なのじゃ！”の一言から生まれた魔法だ。

「というか、一度、妾もその地球とやらに連れていけ！興味が尽きないのじゃ！いや、分かっていたのじゃよ？この惑星以外にもいわゆる知的生命体がおる可能性はっ！」

「落ち着け、リゼ。久しぶりの再会だというのに」

「おぉ、それじゃ！何故、妾の工房に来ないのじゃ！！」

「先に土産をと思ってな」

「それは、アレか？レオンの記憶に会ったPCという物じゃな？」

「今の俺はイチローだ」

人の話を聞かないリーゼロッテはいそいそとノートPCの箱を開け始める。

「使い方は分かるのか？」

「大丈夫じゃ、貰った記憶に必要以上にあるのじゃ、お主これで飯を食っていたのじゃろ？ここでは“いんたーねっと”は使えんが、それでも“そふとうぇあ”があれば色々とできるのじゃ。それに、ちょっとした“あぷり”くらいは妾も作れる様になる」

そう言いながら、彼女はプリンターの箱を開封している。

「しかし、どれもこれも、興味深いのじゃ！」

「全部、持って行ってくれて構わない。将来的にダンジョンの暮らしをより良くしてもらえれば、皆が喜ぶ」

「この書物の選択を見るに、蒸気機関と発電か？ふむ、蒸気機関は妾たち、青銅のエルフの工房や、生産区画にも導入できそうじゃが、発電はそう簡単な気がせんのぅ。あまり期待するなよ」

「あぁ、あくまであれば良いなという将来のためだ。ヴェレダ、リゼ達の工房区画まで運ぶのを手伝ってあげてくれないか？」

「わかった、青銅の奴らは非力だからな」

「ふん、妾たちは頭脳労働担当なのじゃ！」

ヴェレダは謁見の間の入り口に立つ、人狼族の兵を呼び寄せて、広間に並べてある購入物を運び出していく。

「では、お暇するのじゃ。何か面白いものがあったらまた持って来て欲しいのじゃ！」

「……青銅のエルフは寡黙な種族のはずなんだけどな」

「おじ様、それは彼女を“除いて”の話ですわ」

その後、スカーレットと明日の打ち合わせをした後、その日は眠りについた。

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