4人体制を整える

「やっと俺ら学祭が終わって落ち着きました」

「俺もやっと仕事が落ち着きつつある」

「これで久々にSDX全員が揃った企画が始められそうだね」


 久々にSDXメンバーが集合したプロさん宅。大祭で忙しくしていた俺とカン、そして夏からずーっと忙しかった仕事がようやく落ち着きつつあるソルさんもゆっくりと出来ていた。と言うかソルさんは2時間有給というのを宣言して早抜けしてきたらしい。

 なかなか全員集まれなかった間は、これを見越してそれまでに撮り溜めていた動画を細切れにして時間を稼いだり、個人の動画で間を繋いでいた。特に、毎日上がっていてスゴいなと思ったのがソルさんのツミツミ動画。ツミツミはツミというブロックをなぞって消すスマホのパズルゲームだ。

 何の声を発するでもなく、淡々と「今日のツミツミ」と題して上げられる5分程度の動画。上げたのは俺でもカンでもプロさんでもないからソルさんだとわかるような感じ。それが始まって1週間後くらいに、せめてキャラアイコンくらいは貼っといてくれとプロさんから注文が入って現在の形になった。


「拓馬、仕事落ち着いたけどツミツミ動画は続ける?」

「気分による。それよか何か企画モンやってもいいんじゃねえのか。最近ぐだぐだなのばっかだっただろ」

「そうねえ。コンちゃん、何かMOD作る?」

「MODを作るにしてもコンセプトが欲しいですね」


 企画物がやりやすいのはマインクラフトになるかなと思う。その気になればSDXオリジナルルールのゲームを立ち上げたりも出来るし、情報系学生の俺とプロさんで企画用のシステムを構築することも出来る。

 ただ、システムを構築する前には土台が必要になる。世界観とか、ルールとか。そういう仕様がないとなかなか何をするにも始まらない。じゃあ、仕様は誰が決めるの、考えるのという話になる。

 それでは逆に別のゲームなどである物を使って茶番からのゲームをやるという路線に話が移る。ドンパチなのか、レースなのか。まあ、その辺はなるようになるとしか言いようがないしこれも特に詰められることはなかった。


「ちょっと、何かないの!? このままじゃ拓馬のツミツミ動画がSDXのメインコンテンツになっちゃうよ!?」

「それはさすがにマズい。スガ、何かねーの」

「俺はシステム構築専門みたいなところがあるし仕様がないと何とも」

「使えねーな!」

「そういうお前こそ何かあるのかよ」

「え、ないっす。思いつかねっす」

「お前こそ使えないな」

「はーっ……思いつかねえなら昔やった企画を掘り起こして改善するとか失敗企画のリベンジするとか、あるだろいろいろ」

「ソル天才! いよっ、出来る男は違うね!」


 ――というワケで、SDXの過去動画を掘り起こして見る作業に入った。そもそもSDXはゲームで魅せるというよりはわちゃわちゃした掛け合いがウケている集団だ。プロさんは「これはキャラクターロールプレイングだから」と言っているけど、それがハマっているような感じ。

 どうせロールプレイングならこのキャラクターを下敷きに、それこそオリジナルRPGなんかを作れれば楽しそうだなと思う。だけど、俺にそんなストーリーを考える能力はない。誰かが原作でも書いてくれればそれを形には出来るのに。微妙にピースがはまらない。

 ここ最近のぐだぐだ動画からは本当にやっつけですという感じのぐだぐだ感が出てしまっていて過去作の方が圧倒的な面白さがある。改善でもリベンジでもいいからまずは4人揃ってちゃんとした物を出さないと、SDXというキャラクター遊びは終わってしまうだろう。


「そしたらアレやる? ソルの大逆襲」

「やってやろうじゃねえか」


 ソルの大逆襲というのは、マインクラフトで牢屋に入れられたという設定のソルさんが脱獄してボス的な存在のエンダードラゴンを倒すまでの時間を競うという企画だ。俺たち3人はソルさんにエンドラを狩らせないための刺客役。結構好評だったんだ。

 ただ、前回は看守役の俺たち3人が早々に残機を削られゲームオーバー。結局最終的には大逆襲どころかソルの大冒険という名前に企画が変わりそうな感じになっていた。早々にゲームオーバーになった俺とカンが村を築くおまけ動画も作られたなど。


「何かルール変える? 看守の残機ちょっと増やすとか」

「そうだな、お前ら……特にチータがチョロすぎるし残機増やしていいぜ」

「よーしそこまで言うからにはぶっ潰してやるぜソルめ!」

「でも、3人がかりでソル1人に負けるって相当だと思うんだよ」

「と言うか完全に俺とカンがプロさんの足引っ張ってましたもんね……当時よりはプレイヤースキルも上がったと思うんですけど」

「次やるときは看守もちゃんと作戦練ろうね」


 何か上手いこと企画が回っていきそうでとりあえず安心している。この間に新たな企画を思いつけばいいんだけど。アンテナを張らないとなあ。


「つーか元ヤンがそれだけゲーム強いって反則じゃね?」

「チータ、何か文句あんのか」

「ないでーす。一緒にやれて楽しいでーす」

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