銃と火薬とアイスクリームと
銃と火薬とアイスクリームと
著者:クロ 様
作品url(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885257713)
なぜこの作品を最後に持ってきたのかと言えば、大物だったからです。
字数もさることながら、すでにたくさん星が付いていて、コメントも多いです。
そんな作品に対し、いつものアレで感想を書くなんて恐れ多いじゃありませんか。
でもやる。
ということで、読みます。
凪いだ文体の、ショッキングな導入。
何が「私」をそうさせたのか、知りたいがために先が気になります。
人によって好みは分かれるでしょうが、ガチな戦闘シーンが出てくる前、ホラーな雰囲気の前半部分が私は好きです。凄惨なことは凄惨なのですが、淡々とした文章がすっきりと読ませてくれます。「私」の狂気を狂おしく描き出す筆致の美しさよ。
作中の「吸血鬼」は感染症であり、貧血状態を起こして他人の血を欲するものの、いわゆるモンスターの吸血鬼とは全く様相が異なります。
人間を超えた力を手にする、という点では怪物ですけれども。
まだ吸血鬼症については多くが語られず、謎は多いですが、今後徐々に語られてゆくのでしょう。
気になるところとしては、頻繁に入れ替わる人称。現状3人分の一人称と、三人称が入り乱れています。話によっては途中で人称が入れ替わることも。合計4つの視点は、少々多すぎに思えます。
特に「私」は白夜さんと和月さんで2人いるので、かぶりが気になりました。読み進めればわかるのですが、次の章を開くたびに「今度は何人称で、一人称なら誰なんだ」と身構えてしまいます。
最後に、個人的に好きな部分を。
友達に誘われて「気が進まない」ながらもいじめられっ子に暴力をふるい、味を占めてタガが外れてしまった女の子。
首をくくって死ねずに不思議な力を手に入れたことで、やはりタガの外れた白夜さん。
スケールは違えど、この2人は重なって見えます。
作者の「人間の理性のタガは、簡単なことで外れてしまうんだよ」という思いが込められているのかも、と思ったり。
女の子を折り殺した白夜さんの台詞「なんだ……鶴にはならないんだ……」はありありと空虚な声音が想像できました。白夜さんの狂気を感じさせる、すてきなシーンです。
素敵な作品、ごちそうさまでした。
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