夜に踊れ

夜に踊れ

著者:山吹弓美 様

作品url(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880367461


 字数制限を引き上げたはいいものの、いきなり腰を据えて読むのはしんどいです。

 というわけで、まずは一番短いお話から読ませていただきました。


 一読して、児童書っぽい印象を受けました。

 印象の出所を考えてみましたが、主人公が小学生の女の子であること、重要人物である「洋館の女性」が気さくなご近所さんであること、物語が(女性の事情は別として)全て主人公の行動範囲、つまり「ご近所」で完結していることなどによるのではないかと思います。

 あとは、普通の大人がいないこと。

 近所で起こる奇妙な出来事を心配したり、その事件を「吸血鬼の仕業だ」と噂する子供たちを「そんなのいるわけないでしょ」とたしなめたりする人たちは存在しますが、物語に深くかかわりはしません。

 洋館の女性は大人ですが、彼女は超常の世界の人ですので、「普通」の大人ではありません。


 もしも主人公が中高生だったなら、ライトノベルっぽいなと思ったかもしれません。

 ですがあくまで主人公は小学生。一人称ではありませんが少女に寄り添った地の文であるために柔らかく、それが児童書っぽさを醸し出していそうです。


 肝心かなめの吸血鬼ですが、そうですか、バートリーさんを連れてきましたか。しかも善玉で。私が見てきた中で、バートリーさんが善玉だった作品は初めてです。やられた。背負った業も、善玉たる動機としてうまく消化しています。


 ただし彼女の身の上語りが少々助長に感じます。元ネタを分かっている人が読んだら「そこまで言わんでも理解したよ」となりますし、もし全く知識のない人が読めば「設定語り長いな」と思いそうです。

 相手が出方を見ているとはいえ戦闘シーンでありますし、「なぜそれを少女に聞かせたかったのか」という疑問も生じます。


 そして敵の吸血鬼である犬。

 「魔物になってしまった犬」ということですが、作中の「魔物」はイコール吸血鬼なのか、他の魔物も存在するのか、どういう経緯で魔物になりうるのかなどがオタクとしては気になるところです。字数の限られた短編小説に、それを要求するのも野暮な話です。

 ラストにおける「洋館の女性」と「エルージェ」の関係性も気になるところですね。本当に記憶がないのか、単にうそをついているだけなのか、前者の場合はどんな力が働いているのか……。考察がはかどります。


 完結済みとのことですが、もし連作だったのならそのあたりの謎も明らかになったのかな、と思います。 

 

 今晩はこれにて。

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