マナロイド
星ぶどう
第1話人形
原動力が蒸気の世界、新たな資源『マナ』が採掘されたのをきっかけに煙も少ない『マナ』はデュゲリス帝国の皇帝から一般市民まで使われていて重宝していた。
さらに『マナ』を液体に変える事も可能となり料理上手のケイトおばさんの美味しいクッキーを焼く燃料にも使われ、はたまた帝国の火器(銃)に試験管のような形の中に溶かしたマナを使って強力な武器となった。
だがその資源も底をつきかけてきた、今は軍の上層部の兵器、皇帝などしか使われないしろ物となっていた。
★
煙が立ち込める『コ』の字に配置された壁際に一人の少女が今にも倒れそうでボロボロに立ち尽くしていた。
幼さが残るその少女は長いブルネットの髪をたらしていた。
着ている服は元は真っ白だったが今では所々に土埃がこびりついているワンピースだった。
彼女はただ取り囲んでいる帝国兵を虚ろな目、怒りを顕にしているでもなく悲しんでるでもなくただ単に兵をぎょうぼうしている、ここを突破する方法を計算してるようだ。
下級の帝国兵が使っている火器は蒸気の力で弾を発砲する小さな煙突が胴体に取り付けられているしろものである。
10人ほどの兵士が後ろが壁の少女をV字型にとりかこんでいる。
一触即発の空気、ぷしゅっと壁に張り付いた蒸気を逃がす煙突が規則ただしく煙をはいていた。
兵士の後ろには目の細い顔の形が逆三角形の帝国兵がいた、他の兵士は青い制服だが彼は赤い制服に身をつつみ、腰のホルスターにはマナ・ワールのタンクが取り付けられている火器を吊るしている、口髭はこだわりなのかカールしていて何度も形を整えようと自慢の髭をくゆらしている。
彼は帝国軍人のルースター大尉である、上の命令で少女を傷つけず捕らえよという事に驚きそれも兵士を10人も渡されて帝国はどうかなったんですかねぇっと天をあおいだしかし件(くだん)の少女を見てその意味を悟った、彼女が今両手に持っているのは屈強な筋肉の腕も片手で撃てばぶっ飛んでしまうスチームイーグル、それをうさぎの脚のような細い両手にそれを持っている、ただでさえ衝撃の強い火器にマナ・ワールのタンクがこれでもかとばかりに取り付いている。
「きっとた、ただの脅しですねぇ、あんな小娘がどでかい火器を扱える訳がありませぇん、兵士らよ構わず撃て」
パパパ、プシューという音と共に兵士はスチームで稼働する火器を少女が見えなくなるまで撃ち続けた、蒸気の煙と弾薬の煙が風に飛ばされ全貌が見えた時、兵士とルースター大尉は目を見開き幽霊でも見たようにがたがた震えだした、そう少女はあれだけの弾丸を受けながらビクともしていなかった。
彼女はタンクを除いても重量が1.909あるというスチームイーグルの2丁火器で軍人に向かって発砲した、二発のマナ・ワールで強力になったそれは兵士達をぶっ飛ばし、地面のコンクリートにクレーターを作り出す。
ルースターは木箱に隠れてガタガタ震え頭を抑えていた。
残っている兵士がルースターに訪ねた
「ルースター大尉、あれはいったいなんなのでありますか?」
見ると少女が持っている火器のマナタンクのマナ・ワールは一滴も減っていない。
「こっちが聞きたいでぇす、銃弾もきかない! マナ・ワールの銃をおもちゃのそれのように扱う、さらにマナ・ワールも減ってない。なんですかぁ!」
髪が短いのにいつの間にか頭をふった彼は爪をかんでいた。
分からないと言ったものの聞いた事がある、自らの体内でマナ・ワールを造出す少女。
(皇帝陛下が欲しがっていたというのを聞いたのを思い出しました、あれは人間ではなくマナロイドとか言う人殺し人形でぇす、最初からおかしかったですねぇ、少女一人に複数の兵士、スチームボット一機……)
スチームボットと自分で思いだしたルースターはタタタと逃げるように走り去りいなくなってしまったので憐れ、残された数少ない兵士は狼狽えていた。
だがルースターはかえってきた、さすがお追従と賄賂と卑怯な手で大尉までのしあがってきた彼。ひひひっと笑いながら乗り物に乗って戻ってきた。
スチームボット、スチームパンツァー、ブリキ缶、鋼鉄のデスクリムゾンと複数の名前を持つそれはすり鉢のような形に座り心地の悪い椅子、そこにルースターは収まっている。
腕がついてあり、そこにはぶっとい鉄の鉤爪後ろの方には四本の煙突が真っ黒な煙をボッボッならしていた。(オペラでいう所のバス)
マナ・ワールではないが生意気にも大きな大砲が腕のように伸びている。
「これでぇジィエンド、でぇぇぇぇぇすぅ!」
放たれた大砲、刹那、少女は地面に二丁のスチームイーグルを発射して、マナ・ワールの威力により重力をものともせずに自らの体をぶっとばし、曇りと煙突のある無限の空に飛んで行った、所謂エスケープである、だがいくらめっさ強いマナロイドでも戦いを長引かせるのは不利となる、逃げるという前進をするしかない。
だが運悪く粉々になった壁の破片にあたり、左の顔が剥がれ堕ち、歯車が回っている中身が見えてしまった。
くるくる回りながら飛んで行った彼女。
そしてとある場所に降下していく。
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