ひとりぼっちメキシコ
碌星らせん
Day1
よく来たな。俺はジョン=スパイラル・グッドスター。俺は今まで凄まじい数のダンジョンを探索してきたが、一つとしてお前に話をしてやる気は無い。だが、今回だけは別だ。俺はお前に何が起こっているのかを教えるため、この日記をしっぴつすることにした。
ダンジョンというのは何なのか、俺はお前のママではないので、そういう話をいちいちする気は無い。どうしてもわからなければ、ギルドマスターや魔導士とかにでも聞け。
だが、ひとつだけ言えるのは……ダンジョン、そのなかでも人の立ち入らない深層ダンジョンは、メキシコだということだ。メキシコというのはつまり、しんの男の国だ。ゆだんすればお前はすぐさまダンジョンモンスターの餌食となり、身ぐるみを剥がされ、メキシコの路地裏で屍を晒すことになる。
「ダンジョンに潜ればすごいカネが手に入る」「ベイブにモテモテになれる」「ハーレムで無双したい」……お前はすぐに王命とかに騙され、気を抜いてしまい、そういう甘っちょろいことを考え出す。そういう桃の蜂蜜漬けより甘い考え方は、ダンジョンにおいてはつうようしない。お前はすぐさま迷宮1Fの薄暗い壁際とかに蹲って、震えながらママに助けを求めることになるのだ。そして、仲間にしたうちされながら地上へと無理矢理運ばれ、二度とダンジョンに潜ることなくそのへんの宿屋の店主とかになり……「あのときああしていれば」とか言いながら昼間から酒場でくだをまき……そして、老いて死んでいく……
そういう『モグラ』を、俺はなんども見てきた
ダンジョンに潜る人間は、『モグラ(モール)』と呼ばれる。俺もその一人だ。この国には、たくさんのモグラが居る。だが、その大半は腰抜けだ。
ダンジョンに潜る者のなかでも、しんの男は数が少ない。ダンジに呑まれ、多くが死んでしまう。そして、僅かに少ないしんの『モグラ』……たとえばアントニオ・バンデラス卿(仮)のような屈強なダンジョン探索者でも、決して一人では深層ダンジョンには潜らない。あまりにも危険すぎるからだ。
深層ダンジョンとは、そういうものだ。お前は知らないだろうが、深層(ディープ)と言っても、深さとは関係ない。
神話の時代から、じんるいの侵入を拒み続けてきた、メキシコの中のメキシコ……麻薬組織やタルサ・ドゥーム(※モンスター名)がうろつく魔境の名だ。
そして、今。俺は、この国最大の深層ダンジョン、『深淵(アビス)』の第五層に1人でいる。
どうしてこうなったか。まずは、俺はそこからこの日記に書いていこうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます