悪魔憑少女【デーマニック ポッセション ガール】

吉宮 雫

プロローグ

0枚目 プロローグ

 私は常々思っている事がある。

 普通とは何かって。

 よくわかんない。

 それって、目が見えること?

 それとも、会話が出来ること?

 文字が読めること?

 歩けること?

 何を食べても大丈夫な事?

 それとも性別がきちんとしていること?

 当たり前過ぎて、気にしていない人は多いのだろうけど。

 そのどれもが皆と同じでもーー少し違う所があったら?


 勝手に声が出る。

 目が動く。

 身体が動く。

 まるで誰かに操られるように、故障したゼンマイ人形のように、自分の意志とは関係なく動いてじっとしてくれなくて。

 無理やりじっとするのは結構気力を使うことで。

 まるで水の中で息を止めているようで。

 ーーつまるところ、私はそういう性質の人間で。

 そういう人間を悪魔憑きと呼ぶらしい。



 これは、そんな悪魔憑きあくまつきの話。

 英雄も居ないし、奇跡だっておきやしない、冒険譚でもなければ、喜劇でもない。

 何処にでもあるような、誰もけっして見向きもしないような、日陰者のお話だ。

 笑われても、気味悪がれてもーーごくごく普通に私達が生きてきた、ただそれだけの話である。

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