Robo戦争-世界が再び夢を見る日まで-

藤堂 ゆきお

第1話

「ねぇ、ロボットは夢を見ると思う?」

いかにもホームレスが住み着いているような、廃れたこの狭い場所は、発展都市である中央部から地下通路を抜けた先の路地裏である。そこは任務を抜け出した少年達の溜まり場と化していた。ドラム缶の上に座りながら、リックはチームのメンバーに向かって何の気なしに質問をした。

また余計な事を……。そう思ったのは、反ロボット連盟Aチームの中で最年長のルウであった。リックの発言後、ルウは暫く黙り込んでいたが案の定、メンバーのリーダーであるネオは、赤茶の液体で書かれた"クズ 機械は みんな消えろ!"の隣に貼られた卑猥なポスターを左手で勢いよく叩くや否や、ぐしゃりと丸め潰した。ポスターの中の女性から呆気なく輝きが消え失せた。

「ロボットが夢?あいつら鉄屑にそんな高性能な機能がついてるかよ。人間様を差し置いて」

その声色は明らかに不穏なものだった。当の質問をした本人は、無責任な事に全く気にした様子もなく、ラベルに“コックローチ”というロゴの不快なイラストの添えられた缶詰を投げては絶妙なタイミングで掴むを繰り返しているだけだった。仕方なくルウは口を開くはめになった。

「夢か……、俺は生まれた頃から見た事がないな。ネオとリックはどうだ?」

投げかけられた質問に、ネオはうんざりだと言う風に首を緩く振る。

「ねぇよ……。薬を飲んでも、夢なんて見れねぇ」

ネオは、刈り上げてある右の頭部に手を宛がった。この髪型はお気に入りだ。

「アイツらロボットは、俺達から夢も居場所も奪っていきやがった」

29xx年、旧日本国ジャポニは、他国を凌駕する勢いで近代科学の発展の成功を見せた。大昔、人類がかつて憧れていた夢と未来が、今や身近なものとなり、科学との共存は生活の一部となった。

しかしメリットばかりではない。得たものには必ず代償がつく。それも、問題は一つに限らず複数にも及ぶ。富を持つ者は多くを迅速に解決出来、便利な世であるが、貧困の者は、膨大なエネルギーに苛まれ、欲望を具現化したこの都会に飲み込まれ、病にかかるが多かった。

近年都会人の中で発症しているのは、極度の不眠症である。そして生活水準の低い者は、薬もろくに買えず、絶えず目の下にはクマがあり、痩せこけてまるて生きた死人のようだった。


「最近では、頭の悪い連中がヤクを売ってるからな。人を騙して、薬漬けにしておっ死ちんでもお構いなしってな」

ネオはぼうっと、宙を見つめた。暗がりではあるが、黒い電線が蛇のように壁を張っている。ここにも、最下層の暮らしというものがあるのを物語るように。

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