職業欄に魔王って書くのは恥ずかしい
ロンフロル
第1話 プロローグ
人は自由かつ権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ設けられない。
これはラ=ファイエットらによって起草されたフランス人権宣言の第一条である。
人は古くから自由や平等といった言葉を謳ってきた。だが、その一方で人間という生き物は差別することをやめない。
ナチスドイツのアドルフ=ヒトラー。彼はユダヤ人が世界情勢を支配していることに対する脅威、宗教的な理由などからユダヤ人を迫害し、一千万人以上を殺した。日本では日中戦争の中で捕虜や民間人を大量に殺し南京虐殺事件を起こした。
例を挙げればきりがない。こうした出来事は当時の国の首相、大統領の責任ではない。それらの出来事は人々の総意によって起こされたのだ。
人間という生き物は実に弱い。それ故に自分より劣っている者を見下し嘲笑う。人間の本質は何十年、何百年経ったところで変わるものではない。
今日も差別による問題は解決していない。世界各地では未だに紛争は続き、戦いこそしていないが休戦しているだけの国々もある。
何故か? 答えは簡単だ。
誰も本気で自由や平等を求めていないからだ。
不自由や不平等はときに人々に利益をもたらす。資本主義が良い例だ。資本家と労働者とで立場を分けることにより、経済の成長を促している。しかし、資本家と労働者の身分の格差は開いてしまう。かといって社会主義が良いというわけでもない。行き過ぎた社会主義は独裁者を育てる。スターリンがそうであったように。
俺は嫌いだ。
不平等を黙認している世界が。
俺は嫌いだ。
利益を独占する金持ちが。
俺は嫌いだ。
不平等な現状に満足している貧しい者達が。
俺は嫌いだ。
何もできないと己を決めつけて努力をしないやつらが。
人とは愚かな生き物だ。ほとんどの人間が明日という日が当たり前のようにあると思っている。自分が次の瞬間にはこの世に存在しないかもしれないなどということは思いもしない。それ故に気づけない。気づいたときには既に失っている。この世で死というものだけがすべての人々に平等に訪れるということを知っているはずなのに。
俺もまたその愚民の中の一人にすぎなかった。
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