第12話
「……もうちょっとほかの作戦は無いんですか?」 被害者その一、もといガラが心底嫌そうな顔で再考を求めてくる。
「無い」 ライが即答すると、ガラは盛大に溜め息をついた。
「嫌なのは想像つくがな、手っ取り早く燻し出す方法がほかに無いんだよ――内部の状況と人数、障害物の配置が正確にわからないから、突入はさせたくないし」
その返事に、ガラたち王国兵がたがいに視線を交わす。古参兵のひとりが気を取り直して、
「で、残りの六人は?」
「両側の入り口脇の死角で、ガラたちが始めるまで待機してもらう――俺が合図したら突入してくれ」
自分の手持ちも含めた硝石をふたつの鞄の中に手早く詰め込みながらそう返事をすると、兵士たちはそれはそれは嫌そうに嘆息した。まあ、ライだって自分でやれと言われたら似た様な反応を示すだろう。気持ちはよくわかる。
「点火はどうするんですか?」 あきらめて自分の任務に集中することにしたらしく、ガラがそう尋ねてくる。
「これだ」 ライはそう返事をして、自分の太腿に括りつけた
「それ、たしかあのばすの中から持ってきたやつ?」 メルヴィアの質問に、ライはああとうなずいた。一度出発しかけたライが隊列を止めて引き返し、バスの車内から回収してきたのを思い出したのだろう。
「それ、なに?」
「発炎筒だ」 『スーパーハイフレヤー5』と印刷された赤い筒を軽く揺すって、ライはそう返事をした――自動車用緊急保安炎筒、所謂発炎筒だ。バスが新車だったからだろう、発炎筒の外装はまだ真新しい――どうやら三本あるうちの一本もしくは二本は後から追加したものらしく、どちらが
発炎筒は自動車に必ず積載しておかねばならない装備だが、別段一本しか積んではいけないというわけでもない――会社あるいは運転手が割と神経質なほうだったのか、車内を調べてみたら三本出てきたのでありがたく拝借してきたのだ(※)。
「ハツエントー?」 耳慣れない言葉に首をかしげる兵士たちに良く見える様に、ライは手にした発炎筒を翳した――発炎筒の長い蓋を抜き取り、その下にかぶせられた白いキャップを抜き取って燃焼剤を露出させる。
「この白い蓋をはずして、茶色い部分を露出した棒の、この部分にこすりつけると燃える。燃え出したら、窓から中に投げ込め――最初が鞄、二番目がガソリン、三番目がこいつだ。上階層と下階層にひとつずつ窓があるから、それぞれ一組ずつ投げ入れろ」 キャップをはずして白いキャップの表に貼りつけられたマッチ箱の摩擦部分、横薬の様なストライカーと燃焼棒の先端を摩擦する真似をしながらそう説明すると、ガラが手を伸ばして足元に並べてあった二本の発炎筒――どちらも『サンフレヤー
「棒の向きと平行に、噴き出す様にして炎が出る――投げ込んだらすぐに離れろ。あとはふたりでそこで待機、窓から出てくる奴がいたら殺せ――煙を吸い込まない様に気をつけろよ」
※……
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/69/4a88aad421ede92315c9653e6646a59b.jpg
先日、といってももうそろそろ丸一年ほど経ちますが、大阪の北港舞洲で開催されたバステクフォーラム2021というイベントにお邪魔してきたんですが、そこで路線バスや大型バスを見学する機会がありました。もしこのイベントに参加して、バスの脇で地面に寝そべって車体の下側の写真を撮ってる変な男を見かけた方がいらしたら、その不審者は俺です。
大型バスのは確認しなかったんですが、いすゞの
保安基準上必ず積載することが義務付けられている発炎筒ですがバスの場合は二本が義務なのか、あるいはこの型をデザインした人が多く積めるのはいいことだという作者みたいな考え方の人だったのかもしれません。
なんにせよ二本積むのが仮に義務だったとしてもそれがいつから施行されたのかがわからないので、本作中においてはこういう表現になっています。それに実際、グローブボックスがパンパンになるまで発炎筒を詰め込んでいたからと言ってしょっぴかれるわけでもありません。
ちなみに俺のバイクには、発炎筒が四本とLEDの赤色表示灯が一本放り込んであります。
スーパーハイフレヤー5という銘柄でして、タングステン鋼製のグラスブレイカーを後付けで装着出来るオプションパーツがついていたので四本すべてにこれを装着して積んでいました。もちろん二輪車でガラス割りなんか使い道は無いのですが、必要になるのが内から外へ脱出する場合ばかりとは限りませんからね。
検査を受けたついでにトヨペットに寄って発炎筒を新しく調達してきたんですが、なんか形状変わっててガラスブレイカー装着出来なくなってたんですよねえ。Z-REXあるから別にいいけど。
なお、火を噴くタイプの本来の意味での発炎筒はもうすでに二メーカー三種類しか無いみたいです。
燃焼するタイプの発炎筒は上記のスーパーハイフレヤーとサンフレヤー、サンフレヤー
それはともかく、電動バスのそばで土砂降りの大雨でずぶ濡れになってたねーちゃんに傘渡してたおっちゃん、あんた輝いてたぜ!(`・ω・´)b
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