第14話
「そのまさかなんだな、これが」 二の句が継げずに絶句しているリーシャ・エルフィに向かって、ライが適当に続ける。
「ちなみに字面は
まったく知らない奴が変な名前をつけてるのを見てるだけなら面白いけど、本人からしてみればいい迷惑だよな――そう続けてから、ライは身じろぎして後方にひっくり返りかけたメルヴィアの体を抱き直した。
「貴方のお名前は一般的なのですか?」
「否、そうでもないと思う」 ライはそう答えてからちょっと考えて、
「珍しい名前ではあると思う――ただ馬鹿馬鹿しい名づけってわけじゃない。辞書の人名項目にもちゃんと載ってるしな」
「くらげさんは?」
「まさか」 首をすくめるライに、リーシャ・エルフィは唇に指先を触れさせて、
「それでは、成人するときに自分で名前を変えるしか選択肢が無いのですね」 その返事に、ライがかぶりを振る。
「残念ながら、俺の国には成人の際に名前を改める仕組みが無いんだよ――二百年くらい前までは支配階級に限っては成人の際に改名をする習慣があったんだけど、今はそれも無くなった」
「それでは、一生そのままですか?」 それに、君らの国だって平民に改名の習慣はないだろ?と続けたライの言葉に首をかしげるリーシャ・エルフィに、
「変えようと思って、変えられないことはない――ただすごく手続きが大変らしい。生まれたときに名前を役所に申請するから」 あの国の役所は書類ばかりだしな――と、ライが答えてくる。
「役所から書類仕事を取ったらなにも残りませんよ」 リーシャ・エルフィの返答に、ライはそれはそれは嫌そうに顔を顰めた。
「だって、あとから手続きが適正かどうかを検証可能な様にして記録に残さないといけませんし」 大変なのですよ?と続けるリーシャ・エルフィに、ライはちょっと考え込んだ。やがてかぶりを振って、
「……君の意見もわかるが、書類管理の実状を鑑みるにとてもそうは思えんな」 みんなでんしかされてるし――そんなことをつぶやいて、ライが頭上に広がる星空を見上げた。
「でもあれだ、どうせ名前の話をするなら、俺は君たちの名前の由来が知りたいよ」
「わたくしたちですか?」 尋ね返すリーシャ・エルフィに、
「ああ――君の名前にはなにか由来は無いのか? 花の名前とかさ」 そんなふうに続けてくる。
「ああ」 リーシャ・エルフィはうなずいて、ちょっとだけ唇の端を吊り上げて笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます