第27話
「でも
「心配しなくても、ちゃんと請求書につけておくよ」 ライはそう返事をして適当に手を振り、話を戻すと合図をしてから言葉を続けた。
「ただし胡椒のほうには条件がある――専業で胡椒農家をやるなら、さっき言った通り三~五年は収入がゼロになる。そのぶんを国費で補填してやること」
リーシャ・エルフィがその言葉に小さくうなずいて、
「なるほど。ほかには?」
「
「いい名前だと思うのですけれど」 首をかしげるリーシャ・エルフィに、
「ちっとも良くねーよ、
ライやメルヴィアの呼び名――
エルンの言語は基本的に後ろから順に読んでいくので、勇者の弓であればリュー・シーヴァ、シーヴァ・リューであれば弓の勇者という翻訳が正しい。
そのため現代式のエルンの言語と文法が異なっていてもひとつの単語、あるいは成句として成立している。現代の地球で言えばロス・アンゼルスがひとつの固有名詞になっている様なものだ。
これは
対して
「各自一袋の胡椒を持ち歩き、いかなる招かれざる敵の来襲もこれで撃退する様に――」
天を仰ぎながら――実際に視界に入ってきたのは機体とユーコン・ストーヴを守る竹小屋の天井だったが――つぶやいたその言葉に、ちょうど通路から姿を見せたメルヴィアがいぶかしげに声をかけてきた。
「なにそれ?」
「なんでもない。ただの俺の世界で七十年ほど前にあった戦争中の、本営から兵隊への通達だ――実話かどうかは知らんが」 さっぱりわけのわからないその返事に頭上に『?』マークを乱舞させながら、メルヴィアが首をかしげる――わけわかんねえだろ? 俺もわかんねえ。
「チーズなんだけどわたしの鞄に全部入りきらなかったから、ライの鞄にも入れさせてね」
「ん? ああ――どうせ運ぶのは
「ガンシュー・ライ、全部無くなったが」 日本人の学生数人とともにユーコン・ストーヴを囲んでいたガズマがそう声をかけてきたので、ライはうなずいて立ち上がった。
「ああ、わかった」
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