第34話
そしてどんなに強固に設計しても、門が防壁以上に強固になることは無い――門には可動部分があり、門自体がどんなに強固でも可動部分の破壊は容易だからだ。最初から一体の防壁にしてしまったほうが、守りは堅い。
それはつまり、防壁上に詰める兵たちが地上戦を挑むことを想定していないということでもあるが――
砦そのものは南側の傾斜のすぐ手前に築かれており、したがって防壁も傾斜を登りきってすぐのところにある。
防壁は基部から七メートルほどの高さから外側に向かって四メートルほど張り出しており、防壁上の通路から地上を見下ろすと防壁の基部ではなく斜面が視界に入ってくる――鼠返しの様に一部をオーバーハングさせることで、城壁を直接登攀して防壁上に侵入出来ないようにするためだろう。そのため防壁の上部の厚みは基部よりも分厚くなっている。
防壁の基部の外側には幅三メートル、深さ六メートルほどの
水が満たされているか否かにかかわらず壕の存在意義は直接防壁の基部に接近出来ない様にすること、それに城門がある場合は壕を渡るための跳ね橋と城門を一直線に配置しないことで人間が使う
この場合は最大の目的は三番だろう――基部に接近する理由は城門を破るためと城壁を直接登攀するためだが、城壁のオーバーハング部はほとんど直角に近い角度になっているので直接攀じ登るのは難しい。ついでに先述したとおり城門は無いので、
壕の南側の縁から基部から十メートルほどの斜面は石材で舗装されており、防壁上からなにかを落としても地面にめり込んだりしない様に出来ている。
理由は簡単に想像がついた――
「うーん、この地形なら丸太かな」 そんなことをひとり語ちる――城壁を攀じ登る敵に岩なり石なりを落としたり熱した油や煮え湯を撒くのは基本だが、この地形であれば丸太がふさわしいだろう。なにしろ枝を払った丸太ひとつを蹴り落とせば、きついところで四十度近い急勾配をひいこら登ってくる敵の足元をすくいながら坂の下まで転がっていくのだ。
せっかく斜面のすぐ上に防壁を築いているのだから、勝手に下まで転がっていってくれればそれだけ加害範囲が広くなる。なにより片づけの手間が無い――代わりに戦闘終了後に回収することも出来ないが。
と、考えると――胸中でつぶやいていったん足を止め、ライは周囲を見回した。
この高台の北側は、伐採した丸太その他の補給資材を置いておくための場所だったのだろうか。それにしたって幅二キロはやりすぎな気がするが。
そんなことを考えながら、ライはふたたび歩き始めた。今はまだ十分距離が開いている――敵の視線を警戒する必要は無い。
さて、どこから近づくか――
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