第10話
王女リーシャ・エルフィの乗った
樹海の中に人里は無く、道路は整備されていない――したがって普通は
それでなくても遭難しやすいという理由で、
だから、どんなに急いでいても樹海の中を突っ切ってショートカットしようとする
襲撃現場から途切れる事無くずっと続く轍の跡、それも真新しい痕跡を残すのは、拉致された王女を乗せた
「必要無いからだ」 ライはそう返事をして、右足の脛に括りつけたナイロンとカイデックス樹脂を組み合わせた
先ほどから湯を沸かすのに使っているミドルクッカートレックもそうだが、これらはライのもともとの持ち物ではない――食器類はあのバスと同じ様にこの森の中で発見したスバルのXV、ストライダーナイフはアメリカ軍特殊部隊兵士の遺体から回収、悪く言えば火事場泥棒したものだ。
ライは抜き放ったナイフのグリップを握り直し、ナイフの鋒で地面にバツ印をつけた。それからその向こうに長い線を引いて、線の向こうからバツ印のところまで長い線に交差する別の線を引く――最後にすぐそばを流れる川を指差して、
「俺たちは川を渡っただろ? 奴らが川沿いに移動せざるを得なかったのは、
「俺たちは徒歩での追跡だから、別に渡河場所を探す必要は無かった。俺は
「でもこれだけあからさまな痕跡を残してるってことは、追跡されても問題無いってことですかね?」
「さてな」 ガラの質問にかぶりを振ってから、ライは少し考え込んだ――実のところ、それは重要な質問だ。
馬車の轍など残しては、痕跡をたどるのに
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