第101話 罪
「組長…それって犯罪っすよね…」
徹ちゃんがおずおず尋ねると、真柴はうなずいた。
「表沙汰になりゃ、当然後ろに手が回るだろうな」
「じゃあ、いずみさんの出生の秘密を知った加藤は
早苗さんを強請ろうとしたの?
だから、いずみさんの周辺を調べ回っていたのね。
キャトル・レザンを尋ねて来たのは加藤なんでしょ?」
あたしの矢継ぎ早の質問に、真柴は小さくうなずき
「ストーカー紛いの事をしていたらしいな。
加藤の部屋にあったデジカメに、このデータが残ってた」
内ポケットから数枚の写真を取り出すと、マジシャンのような手つきで
扇形に広げる。
いずみさんを撮らえた写真は、全て遠巻きに写されていて
隠し撮りされたもののように見えた。
いや、そんな事より…
「何であんたが、そんな写真持ってるのよ!」
あたしが驚きの声を上げると
「昨日、加藤のアパートに行って、大家に遠縁だと名乗ったら
すぐに部屋に入れてくれた」
「昨日?」
あぁ、あたし達が向かう前に、真柴は加藤のアパートを訪ねていたんだ!
”引き返す”―――その言葉の意味がやっと判った。
「加藤は留守だったの?
それにしても随分いい加減な大家さんね。
そんなに簡単に他人を部屋に上げるなんて」
真柴は眉根を寄せた。
「大家も家財道具の処分に困ってたんだよ。
何しろ引き取り手のない仏さんだからな」
え?仏さんて…ええっ!
真柴は射るような視線を早苗さんに向けた。
「加藤 慎二は死んだよ。5日前に列車に撥ねられて。
勿論知ってるよな?」
早苗さんの顔が強張った。
硬く目を閉じ、俯いた姿は微かに震えている。
やがてゆっくりと顔を上げると、あたし達の方に向き直った。
そこには、泣き笑いの表情が浮かんでいた。
「知ってるわ。私が突き落としたんですもの」
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