姫と殺し屋(仮)

十色

理由(1)

 ポタッポタッ......。

 広い浴室に水の滴る音が響く。


「わぁ...ひろーい!」

 

 その音をかき消すかのように少女の声は浴室に響いた。そして、入ってきた扉を閉めながら今度は男の声が響く。


「おい、ちゃんと体洗ってから入れ」


「洗うってどうやって?」


「...ったく、そこに座れ」


 男の言葉からの会話の流れで、どうやら少女の体を男が洗うことになったようだ。

(めんどくせぇ...)

 そう思いながら、男はシャワーを手に取り、温度を調節するレバーを41度のところにしてお湯を出した、そして座った少女の髪の汚れを洗い流すようにシャワーの水をかける。


「...温かいね。」


 少女がそう呟くと、男は「今なんか言ったか?」と聞き返す。「ううん、なんでもない」と少女が答える。


「シャンプーつけるから目瞑れ」


「シャンプーって何?」


「いいからとにかく目を瞑れ」


 そんなこんなで、不機嫌そうな男がにこにこしている少女を洗い終り、二人で浴槽に浸かる。

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