コノハはかせのすてきなせいじ

みずかん

第1話 コノハ首相と呼ぶのです

「助手!!」


その日の夕方、博士はやけにハイテンションであった。


「そんなに興奮してどうしたのです」


彼女の目は輝いていた。


「我々は“島の長”です!“せいじ”をやるのです!」


「せいじ...?」


「助手は、私に従えば心配ないのです!」


「は、はぁ...」


「明日からやるのですよ!」


何だかよく分からないが、博士は楽しそうだった。


「そうだ、助手。明日からは“はかせ”ではなく、“しゅしょー”って呼ぶのです!」


「わかりました...」


突然過ぎて理解出来なかった。


“コノハしゅしょー?”


なんとなく、小さく呟いてみた。

けど、なんか慣れなかった。



そして、夜が来て、私は眠っていた。


「助手!起きるのです!!」


「ふぁい...?」


私は博士に起こされた。

目を擦りながら、上半身を起こす。

まだ、辺りは真っ暗だ。


「これを見るのです」


見せてきたのは、図書館で見つけ、

かばんに読み方を教えて貰った時計だ。

私もだいたい理解している。


「なんですか...」


「もう零時になったのです。これからはコノハ首相と呼んでくださいね。

ミミかんぼうちょー」


「はぁ?博士、寝言は寝て言ってくふぁさい...」


私は早く眠りにつきたかった。


「だから“しゅしょー”なのです!

私は今日からこの島の“しゅしょー”なのですよ!!」


「そうですね。しゅしょー」


適当に返事をし、眠った。


「こんな大事な時に寝るなんて...

海の外から攻撃を受けたらどうするのですか!」


博士は何かとんでもない妄想に取り憑かれている様だった。


3日で飽きてくれればいいのだが…




朝になり目が覚めた。

下の方で声が聞こえたので、気になって行ってみると...


「あれ...、フェネックじゃないですか」


「あっ、おはよー」


何時もアライさんを追いかけてるハズの彼女がここにいる。


「はか...じゃなかった、首相...

これはどういう事なのです?」


「これは、“かくりょー”を決めているのです。官房長」


博士は自慢げにそう言った。


「かくりょー?」


「“ないかく”のメンバーのことなのです。官房長もこれを読んで政治の勉強をするのです」


そう言われ、分厚い本を渡された。

読む気は起きない。


「ところで、フェネックは?」


「いやあ、なんか仲間になってって言われてねー。いいよって言ったらここに連れて来られてたのさ」


「フェネックには重要な役割を担ってもらうのです。“ふくそーり”と“がいむだいじん”なのです」


私は単なる“ごっこ遊び”だと思っていたが少し力が入り過ぎの様に感じた。


「“外務大臣”にはパークの外にいる者と交渉する役なのです。で、副総理は

総理大臣である私が何かの事情でその役割を代わってもらうのです」


「ちょっと待ってください...

気になる事が幾つかあるのです。

なぜ“かばん”じゃないんですか?」


博士は鼻で笑った。


「“かばん”は賢すぎるのです。

長である私の力を超えるかもしれないのです。だから“かくりょー”に入れないのです」


「では、何故フェネックを副総理に?」


「彼女はそれなりに知識があるのです。また、かばんと共に旅をしてる経験もあります。総理大臣の職を任せられるのです」


やはり、博士の考えはわからなかった。


「ていうか、本気でやってるんですか?」


「私は本気でやろうと思ってるのです」


力強くそのセリフを博士は言い放った。


「まあ、そういうことでよろしくねー

官房長ー」


フェネックは落ち着いたトーンで言う。

彼女はこの奇怪な状況を上手く飲み込めているのだろうか?

それとも、マイペースな性格ゆえに、

特段と考えてはいないのかもしれない


「まだ“かくりょー”を決めなきゃいけないのです。“ほうむ”、“ざいむ”、“かんきょー”、“ぼうえい”は特に急いで決めなければ!」


しかし、あんなにはしゃぐ博士を見たの生まれて初めてかもしれない。

楽しいことを奪っては可愛そうだ。

まあ、まだゆっくりと見守っておこう。


「あっ、官房長〜」


「何ですか?」


フェネックはニヤけ顔を見せた。


「ずっと博士と二人でやってきたのに、

私が博士の代理でちょっとヤキモチ焼いてる?」


「い、いや、そ、そんなことないです

どうせ“遊び”の一環ですし...」


「あれ?さっき本気でって言ってたけど?」


「私は...、まだ“遊び”のうちだと思いたいです」


フェネックは首を傾げた。


「なんで“遊び”のうちがいいの?」


「それは...」


私としては、博士の活き活きした姿を見るのが好きだったが、何か、

予見出来ないが大きな事が起きそうな気がしてならなかった。

その“大きな事”に、博士を巻き込ませたくなかったのかもしれない。

実際、そういう事が起きないかもしれないが…


「...ともかく、今は見守ろうと思ってますけど」


「ふーん...」


つまらなそうな声をフェネックは出した。

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