ミホミ・セカンドフロア
プル・メープル
ミホミ・セカンドフロア 編
幼馴染との再会
※この物語は放課後を舞台とした話です。時間描写はわかりにくいかも知れませんが、放課後を描いていることを忘れないでください。
ねぇ、一太。また、いつか会える?
うん。きっと会える。
だから美穂ちゃん、泣かないで。
本当?約束だよ――――――。
「ん?あ……。」
また夢だ。何度もあの日の夢を見る。
彼女と最後に顔を合わせたのは6年前。僕が小学二年生の時だ。今の僕は中学二年生になっているが、夢の中の別れていく彼女の姿はまだ6年前のままだ。
「学校に行かなくちゃ……。」
そんな当たり前のことを呟いてベッドから降りる。制服に着替え、部屋を出て、階段を降りると母親と鉢合わせする。
「おはよう、母さん。」
「おはよう、一太。ゆっくりしてたら遅刻するわよ。」
今日も母さんは忙しそうに動いている。父さんが死んでから、母さんはずっと一人で僕を育ててくれた。
「ありがとう」なんて、簡単に言えるはずの言葉は、なかなか言い出せずにいる。
だから、その分しっかり、おはようと行ってきます、ただいま、おやすみなさいはしっかり伝える。これが僕にできる最大の愛情表現。母さんには伝わってるのかな?
「行ってきます!」
せっせと忙しそうに動く母さんも、僕が行ってきますというとピタリと動きを止めて玄関に見送りに来てくれる。
「行ってらっしゃい。」
そう言って笑ってくれる母さんに僕は笑顔を返して家を出た。
……学校にて……
「おはよう、一太。」
そう声をかけられて振り向くとそこには夏樹がいた。いつもヘラヘラしているけど、スポーツも勉強も出来て、頑張りやな僕の親友だ。ただ……、
「おはよう、夏樹。」
「なぁ、俺、今日も遅刻しなかったぜ?すごいだろ!」
「まぁ、夏樹にしては頑張っているね。」
夏樹は遅刻が多い。しょっちゅう遅刻してて、今日だってギリギリ間に合った感じだ。ただ、それも仕方ないかもしれない。この学校はかなり田舎にあって、各学年にも10人いるかいないかぐらい。だから、大体の人は顔見知り。夏樹の家は1番遠くて、坂やら何やらを越えて来なくてはならないから……。
「あ、そうだ!聞いたか、あの噂。」
「噂?」
「なんだよ、まだ知らないのか?転入生だよ、転入生!」
「へぇ〜。どんな子なの?」
「そ、それは……可愛い子、だったらいいなぁ……って?」
「なんだよ、知らないんじゃないか。」
そうやって僕は頬杖をつきながらため息をつく。
「こんな田舎に転入生って、どんな物好きだよ……。」
そう言いながらも転入生には少し興味があった。
「お、もう授業始まる時間じゃん!」
そう言って夏樹は一太の前の席に座り、教科書を用意する。そこが夏樹の席だ。
その直後、担任の二亜先生が教室に入ってくる。
「今日は転入生を紹介する。入ってきていいですよ!」
ドアの窓に映る人影がゆれ、扉が開かれる。
あれ?見覚えのある顔……。
「はじめまして!」
少し変わっているけど、聞き覚えのある声……。
「美穂です!よろしくお願いします。」
知っている、忘れるわけない名前……。
「じゃあ、美穂さんは一太くんの隣が空いてるからそこに座ってね。じゃあ、授業始めるよ。」
美穂は机の間を歩き、一太の隣の席、教室の一番端の席に座った。彼女が笑いかけてくる。
「一太くん、教科書、見せてくれない?」
僕は頷いた。
……放課後……
「やっと終わったなぁ、一太!」
「うん、疲れたね……。」
「ねぇ、一太くん。」
美穂が話しかけてくる。
「あ、美穂ちゃん……。」
「も〜、美穂でいいよ?中学生になったんだから!」
「え?2人って知り合い?」
夏樹が首を傾げている。
「あ、うん。幼馴染なんだ。」
「はい、よろしくお願いします……えっと……」
「俺は夏樹だ、よろしく。」
「よろしくお願いします、夏樹さん!」
「ところで、何か用があるの?」
僕は話を切り出した。
「あ、うん。この学校を案内してもらいたいの。」
「いいよ。」
「ありがとう!じゃあお願いね!」
「お前、こんな可愛い子と放課後にか……。青春だな。頑張れよ!」
「あ、ありがとう……。」
何故か夏樹に背中を押されて、教室を出ていく美穂についていく。
「あのね、この学校って不思議な噂があるよね?」
「噂って……あの部屋のこと?」
「うん……確か……。」
この学校には2階はない。1階と屋上があるのみ。ただ、噂では放課後のある時間になると2階が現れてそこには一つだけ扉がある。その場所は思い出の間と噂されていて、心の中にある不安や未練を消すことが出来るんだとか……。
「その噂を信じて……ここまで来たの?」
美穂は恥ずかしそうに頷いた。
「あれ?ってことは美穂には不安や未練があるってこと?」
「うん……少しね。」
僕は少し悩んだが、すぐに決心はついた。
「じゃあ、見に行こう。でも、噂が嘘だったら諦めてね?」
「うん!ありがとう!」
美穂は満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。正直嬉しかったけど……でも、なんだか嫌か予感がした。
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