職業:異世界救世主

朝乃雨音

第1話 救世主

「ニル、こんな所に居たのか」


 街を囲う外壁の西端。その頂上で俺は一人空を眺めていた。朝焼け前の青白い空には真っ白な月が薄く浮かび上がっており、空気は冷たく澄んでいる。


「暇を持て余してるからな。巨人が襲って来ないこの暇を有り難く噛み締めてるのさ」


 俺は声のする方へ振り返って伸びをしながら言葉を発する。その方角に居たのは所属する部隊の隊長であるカーミルであった。二メートルはあろうかという長身とそれに見合った筋肉質な体格、短い銀髪は立たせており、その背には刀身一メートル五十ほどの大剣が担がれていた。


「だからと言って気を抜き過ぎだ。昨日の会議も欠席していたし、もし今巨人が襲って来たらどうするんだ」


「どうもしないさ。いつも通り根絶やしにしてやる。あいつらは妹の仇だ。絶対に許しはしないさ」


 俺は胸の前で拳を握りしめる。

 流行病で早くに両親を失った俺が妹をも失ったのはもう五年も前になる。しかし、その時の記憶は今も鮮明に脳裏に残っているのだ。それが悪夢となって俺を襲い、巨人を見ると憎しみが溢れ出る。どれだけ巨人を倒そうと、あの時妹を救う事が出来なかった悔いが晴れる事は無く、考えるだけで自分の無力さに腹が立つ。


「また妹の事を考えているのか?」


 考えている事を見透かされるのは昔からの友人だからなのかは分からないが、カーミルは妙に鋭い所がある。


「……妹を助けられなかったのは俺の責任だ」


「自分を責めるのはやめておけ。あれは仕方のない事故だ。誰もあのタイミングで巨人が襲って来るなんて想像もしていなかったし、それに対してお前は出来る限りの努力をしていたさ」


「俺は絶対に守らなければいけない人を守れなかったんだ。その罪は努力したからなんて理由で帳消しにはならないよ」


「しかし……」


 カーミルは憂いを含んだような眼差しを俺に向ける。


「心配するな。復讐に駆られて暴走したりはしないさ」


「……あの襲撃の時に部隊長だった俺も責任を感じているんだよ。部隊にあれだけの被害が出たのは俺の責任であり、同時にお前が妹の元へ間に合わなかったのも俺の責任だ。俺に力があればお前をもっと早く妹の元へ行かせてやれた筈だからな」


「そんな事は……」


「あるんだよ。それが部隊長だった俺が背負わなければいけない物だ。一番被害の大きかった南側に居る巨人を倒す事を最重要目標にしたのは俺の判断であり、それは結果として巨人の侵攻を防いだが、部隊の八割りを失う事となった。俺達があの時向かわなければ市民への被害はもっと大きな物となっていただろが、俺はその命令で仲間を死なせお前が妹を助けに行く時間も作ってやれなかった。まあなんだ、だからお前もそう自分を責めるな。俺とお前は同期だが俺は大佐だから背負う事には慣れている。その責任の半分を俺にも背負わせて……」


 カーミルの口が止まる。眉間に皺を寄せ、荒野の向こうに真っ直ぐ伸びた地平線を見つめている。


「どうした?」


 俺は同じ場所へと視線を向けた。そこにあったのは黒い影であった。一瞬何かと思ったがすぐにそれを認識する。


「おい、あれって」


 俺は言いながらカーミルの顔を見る。


「警報準備だニル。急げ! 俺は砲台の準備をしておく」


 影の正体は巨人であった。しかも一匹ではない。数十匹の影が地平線の向こうから押し寄せて来ていたのである。


 俺は無線機の設置してある見張り台へ急ぐ。


 石造りの外壁には東西南北に一つずつとその間に一つずつの計八個の見張り台が設置されており、俺はその中の西の見張り台へ駆け込んだ。鉄の扉を勢い良く開けた先に居たのは二人の一般兵であり、一人は無線の受話器を片手に必死に何かを話している。


「ニル中尉! 大変です巨人が!」


 受話機を持っていない方の兵士がこちらに気付く。その声と表情には焦りが浮き出ており、俺はそれに飲まれないように一呼吸置いてから話しだした。


「分かってる。その事で来たんだ。通話は何処に繋がっている」


「本部司令室です。緊急回線でコールしています」


「通話しているのは?」


「アルフ少将です」


「分かった、変わってくれ。俺から説明する」


「お願いします」


 俺は受話機を受け取り耳に当てる。


「こちらニル中尉。ただいま通話変わりました。……はい。……そうです。巨人の数は黙視できるだけで百以上、今なお増え続けています。この外壁に居るのはカーミル大佐と見張りの一般兵が数名です。………………はい。……はい、分かりました。善処します」


 通話が切れた事を確認し受話器を兵士に渡す。


「それじゃ俺はカーミルの所に戻るが、また何か通信があったら教えてくれ」


「了解です」


 言い残し部屋を後にした俺は武器庫に立ち寄り適当な刀を二本見繕って両腰に挿した。


 本来ならば愛用している刀を使いたい所だが、あいにく刀は本部近くの自室に置いてきてしまっている。先程カーミルに気が抜け過ぎだと言われたが全くその通りだ。明らかに俺のミスであり、怠慢だ。緩んでいた自分が嫌になる。


「仕方が無い、これで行くか」


 刀の柄を摩りながら呟き、カーミルが居るであろう外壁の頂上へ場所に向かう。


 外壁の頂上、対巨人用にずらっと並んだ大砲の横にカーミルは立っていた。俺はその隣に立ち、カーミルの視線を追った。その視線の先に居るのは巨人の大群であり、既に巨人は一体一体を肉眼でしっかり確認できる位置まで迫って来ている。


「遅くなった。アルフ少将と通話が繋がって動ける部隊から順にこっちに送ってくれるそうだ」


「つまり体勢が整うまでは有り合わせで耐えてくれって事だろう?」


 カーミルは薄く笑みを浮かべながら明るく言葉を発したが、その声からは緊張感が伝わって来る。


 それほどまでに現状は切迫しているのだ。眼前に迫る百体以上の巨人。対する俺たちは俺とカーミル以外は一般兵しかいないときた。おそらく、死ぬ気で戦っても十体ほどの巨人しか倒せず、半時も時間を稼げないだろう。この外壁も百体規模の巨人に攻撃されれば一溜まりもない。


 しかし、もし外壁が破られ巨人がなだれ込んでしまった場合、西の街は壊滅し復旧は困難になる。そのため何としてでもここで食い止めなければ行けないのだ。


 この場でそれが出来るのは俺とカーミルだけだ。責任と緊張が押し寄せ、喉が乾く。


「こんな緊張感久しぶりだな。背後にある街の運命を背負ってるんだぜ」


 自分の声が微かに震えているのが分かる。


 復讐の為に巨人に立ち向かう事はあっても、巨人から誰かを守る為に戦うのはそれこそ五年前に妹を失った時以来だ。五年ぶりに背負う責任は想像以上に重く俺に伸し掛かる。


「どうした、怖じ気づいたか?」


「まさか。心地いい緊張感だ。今なら百体相手でも倒せるさ」


「百体は言い過ぎだ。だが、それぐらいの奇跡を起こさなきゃ現状は打開できないだろうな」と、俺とカーミルの背後から唐突に声がする。


 振り向くと銃を持ち葉巻を咥えた男がそこに居た。後ろで縛った黒髪と切れ長の目。黒い軍服の胸には少将の証が光っている。


「グリム少将。援軍ですか? 到着が早いですね助かります」


 言いながらグリム少将の背後を見るがそこに他の兵士の姿は見当たらない。


「残念だが援軍では無いよ。たまたま近くで飲んでたんだ」


「酔いは大丈夫ですか?」


「巨人を見たら一瞬で酔いも冷めたさ」


「それで、見ての通り百体以上の巨人をここで足止めしなくては行けない訳ですが、何か策はありますか?」


「……俺は射撃専門だからお前等見たく巨人を次々薙ぎ倒す何て事は出来ないが、ここに居る一般兵を指揮して砲撃で援護する。だからお前等は二人で五十体倒せ。そうすればおそらく何とかなる」


「半分ですか」


 カーミルが言葉を返す。


「半分だ。半分やればたとえ侵入されても上が何とかしてくれる。指揮が出来る少将と実績の多い大佐、それに討伐数トップの中尉。これだけ駒が揃っていれば五十はやれる。そうすれば俺等は英雄だ。教科書に載れるぞ」


 ゴーン。ゴーン。ゴーン。


 鐘の音が街中に響き渡る。本部の最上階に設置されているその巨大な鐘の音は巨人の襲来を意味する物であった。


 透き通った朝の青白い空の下。街が一瞬にして喧噪に包まれた。


「鐘が鳴ったか。それじゃ俺は一般兵を纏めて大砲で援護する。死ぬなよ二人とも」


「少将もご武運を。行くぞニル」


 カーミルに続き俺もグリム少佐と敬礼を交わし、先を行くカーミルの後を着いて行く。


「それで、俺たちは巨人の大群を相手に立ち回らなければいけなくなった訳だが、何か策はあるのか?」


 カーミルの背中に向かって声をかけるが、カーミルは言葉を返さない。こういう時カーミルは決まって何かを考えている。答えは今考えているから少し待てという事だ。


「時間がないぞ。巨人は眼前だ。ポジションだけでも決めておかないと危ないぞ」


 分かってはいたが、依然としてカーミルは口を開かない。良くあるカーミルの癖だが、カーミルがそれによって非難される事は無い。何故なら、カーミルは必ず正解を導き出すからだ。しかし、今はそうも言っていられない。


「……はあ。なら取りあえず俺が前でお前が後ろだ。俺が巨人を引きつけ時間を稼ぐから横を抜けてしまった巨人を倒してくれ」


「違う。二人とも前だ。俺とお前で前に出てとにかく巨人を手負いにする。殺さなくても良いから次々と攻撃して弱らせろ」


 言いながらカーミルはこちらに振り向いた。


 解答が出るのが早い。カーミルを信じていない訳ではないが、状況が状況なだけにその早さが不安を煽る。


「……それで大丈夫なんだな?」


「そんな事を聞くなんてお前にしては珍しいな。今の俺たちは二人だけの特攻隊で俺は大佐、お前は中尉だ。お前は上官である俺を信じて着いてくればいいさ。絶対にお前を死なせたりはしないから安心しろ。全て俺が背負い守ってみせる」


「頼もしいな。俺はお前を信じるよ。片っ端から攻撃していけば良いんだな?」


「あぁ。そうすれば後はグリム少将が何とかしてくれる。それにもし街に侵入してしまっても手負いならば被害も少なくてすむだろう」


「了解だ。……しかし、お前は本当に強い人間だな」


「それはお前たちがいるからだ。二人で生き残るぞニル」


「もちろんだ。お前も死ぬなよカーミル」


 そうして俺たちは門の前に立つ。巨人までの距離はおよそ一キロ。あと数分もすれば外壁に辿り着くだろう。俺はカーミルとアイコンタクトを取り、二人で前へ歩き出した。後方ではすでにグリム少将がライフル部隊と大砲部隊合計三十人ほどを指揮しており、その姿に安心感を覚える。


「いよいよか」


 カーミルとは百メートルほど離れた場所に立ちながら言葉を漏らす。緊張感で額が濡れた。巨人に対する恐怖は無いが、街を守れなかった場合の恐怖が心の奥でうずくまっている。


 深呼吸をし、そっと目を閉じる。


 背負う恐怖。それが目前まで迫り、俺のまぶたに妹の笑顔が浮かび上がった。後ろの街には妹と同じくらいの歳の子が大勢いる。それを俺が守らなければいけないのだ。


 覚悟を決めろ。今度こそ俺は守ってみせるんだ。


 目を見開き、巨人を睨む。巨人との距離はおよそ二百メートル。横に目をやるとカーミルと目が合った。


「勝つぞ」


 自分に言い聞かせるようにして呟き、俺は走り出した。


 真っ先に正面からぶつかる敵は五体。まずはその五体の足を狙い動きを止め、倒れた巨人で後続を足止めする。ここからは援護射撃があるが個人戦だ。カーミルから半分を任された以上は絶対に奴らを無傷では通さない。


 腰に下げた二本の刀の内一本を抜き振り上げる。狙うは踵上のアキレス腱。巨人の動きにあわせて流れるようにそこへ刀を滑り込ませ勢い良く振り抜いた。


「まず一体!」


 地面に膝を付き倒れ込む巨人を余所に、俺はすぐさま隣の巨人に向かって飛んだ。勢いをそのままに、先程と同じように刀を踵上に向かって滑り込ませ振り抜く。


 先程倒れた巨人に後続の巨人がぶつかり倒れるのを確認し、俺はさらに横を行こうとする巨人を追った。目に付く全ての巨人の足へ次々と刃を通し動きを制御していく。作戦は成功に思えた。倒れた巨人を砲撃が襲い、次々と巨人を殲滅する。しかし、巨人の波は止まらず溢れるばかりであり、一向に収まらない。斬った巨人の数はすでに十を超えていたが横から抜けようとする巨人が後を絶たないのだ。


「数が多すぎるな」


 圧倒的数の暴力。そして何より巨人の勢いがおかしい。知能の低い生物ではあるが、俺や倒れる巨人を前に見向きもせず走り抜けようとするその姿は異常であり違和感が胸につかえる。こうなってくるとカーミルの方がどうなっているのかも気になるが今は目の前の巨人を斬る事が精一杯であり目を向ける余裕は無い。


 とにかく斬りまくる。それしか選択肢は無いな。


 思いながら俺は刀を振るう。ただひたすらに目の前の巨人を斬り続け倒し続け数十分。俺の足下には血が溜まり、背後の門の前にも事切れた巨人が重なって倒れていた。


 しかし、未だに巨人の波は止まらない。


 一体いつになったら巨人を倒しきる事が出来るのか。体力的にも精神的にも限界が近づいて来ているのが分かるが、街の運命を背負っていると考えると踏ん張る事ができた。


 その時であった。


「良く耐えました中尉。後は任せてさがっていて下さい」


 声と共に二十人ほどの兵士が巨人に向かって走り出す。振り向いた先に居たのはガルノラ中将であった。


 黒の軍服をきっちりと着たその少年は見た目だけならば新兵のようではあるが、間違いなく軍最強の男であり、四十歳過ぎの中年である。巨人討伐数は俺の方が上だが、それは俺が中尉として現場に長く居る為であり、戦闘力ではガルノラ中将が圧倒的に上だ。


 その男が来たという事は───


「援軍ですか?」


「そうです。私の専属隊とラーム大佐の小隊が到着していますので安心してさがって下さい」


「いえ、俺にも協力させて下さい。まだやれます」


「それならば大佐達の方へ。私の元では邪魔になります」


「了解しました」


 言いながら私は先程巨人に向かって行ったガルノラ中将の兵士達に目を向けた。圧倒的。その言葉がまず先に出て来た。一人一人はおそらくそれほど強くはない。俺の方が強いだろう。しかし、完璧な連携と技術で迫り来る巨人を次々に殺していたのだ。


 最強の男ガルノラ中将が率いる専属部隊。噂は聞いていたが実際に見たのは初めてがここまで強いとは。


「私の部隊に興味がありますか?」


 不意に声を掛けられ驚く。そもそもこんな戦場で話ができる事自体おかしな話だが、実際巨人は一匹もこちらに抜けて来ては居ない。


「はい。初めて見ましたが想像していたよりもずっと強く驚きました」


「あれは試験部隊です。力がなくとも巨人に対抗出来るように育てました。翌々は教育を下級兵に浸透させるつもりですが、あなたが望むなら今度特別に私の教えている風景をお見せしますよ」


「本当ですか?」


「えぇ」


「しかし何故俺に?」


「所謂後任育成と言う物ですよ。私はこれでも四十過ぎの老体です。そろそろ私の次を見つけなければいけないと考えていたんですよ。あなたの噂は前々から聞いていましたからね。強さだけなら私に迫ると。その後、戦闘を見てみたら本当に可能性があるではないですか。そのためあなたを選びました。どうですかこの話受けて頂けますか」


「それは光栄です。また後日お話を窺いに向かいます」


「楽しみにしています」


「では、俺は向こうの応援にいきますので、中将も無用だとは思いますがお気を付けを」


「あなたも死なないように」


 言い残し俺はカーミルの元へ向かった。


 視線の先ではすでにラーム大佐と数人の兵士がカーミルを援護しており、巨人が次々と倒れていっているのが分かる。


「カーミル! 大丈夫か?」


 カーミルの元へ辿り着いた俺はすぐさま近くに駆け寄った。


 戦闘能力では俺より下なカーミルがあれだけの数の巨人を相手にして無傷な訳が無いと思ったのだ。想像通りカーミルの体にはいくつもの傷跡が残っており、左手からは血が滴っていた。


「ニルか。そっちにはガルノラ中将が行ったらしいな」


「あぁ。それよりもお前は大丈夫なのか?」


「大きな傷は左手だけだ。命に関わるような物は無いから心配するな」


 その言葉を聞き安堵する。


「それよりもラーム大佐を手伝うぞ。ニル、お前はまだやれるか?」


「大丈夫だ。だがその前にお前は止血をしろ。ラーム大佐の援護には俺が向かうからその後で合流してくれ」


「分かった。気をつけろよニル」


 カーミルを少し後ろに倒れる巨人の死体の影に残し、俺はラーム大佐の元へ向かった。


「ニルか。カーミルはどうした?」


「後ろで止血をして後から来ます」


「分かった。お前は俺の後ろについて俺等が逃した奴を殺していってくれ」


「了解です」




 それから一時間ほどの時間が過ぎた。


「殲滅完了です。みなさんお疲れさまでした」


 ガルノラ中将の声が静けさを取り戻した荒野に響く。


 一体どれだけの巨人を倒したのかは分からない。ただ足下は巨人の死体で踏み場もないほどであった。血が川を作り地面を流れる。


「怪我人は他の人の手を借りてすぐに軍の治療室へ行き治療をして下さい。ラーム大佐、ニル中尉は次の指令がありますので外壁にてグリム少将の元で待機を。カーミル大佐には治療室に伝令を向かわせます」


 そうガルノラ中将が指示を出し、それに従い俺が外壁へと向かおうとしたその時であった。


 バシュンッ


 突如音と共に二つの赤い光りが外壁から上がったのだった。


 その場に居た全員がその光りを注視し目を見開く。それもその筈だ。二つの赤の信号弾は危険信号であり、巨人襲来の合図であるのだ。


 俺は自分の目を疑った。しかし、その信号弾はいくら目を擦っても消えはしない。どういうことかさっぱり理解が出来ない。立った今巨人を殲滅した所なのになぜ信号弾が上がっているのか。


 隣に立つカーミルを見ると目が合った。


「どういうことだ? 誤報か?」


 俺の言葉にカーミルは首を振る。


「いや、あそこにはグリム少将も居る。それは無いだろう」


「じゃあ本当に巨人が?」


 二人して同時に後ろ、荒野の向こうの地平線へと目をやった。だが巨人の姿は見えていない。


 その時であった。


 外壁の内側から爆発音が響いたのだった。


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