美女ぼっちには、賞金が懸けられている。
文部 蘭
¥1 賞金狩りです、よろしく
事実、全国にいる「美女ぼっち」全員に懸賞金がついている。
少子化がその勢いを増し、ついにその歯止めが効かなくなった昨今、この国の政府はとんでもない秘策を打ち出すことを決めた。
それが、「美女ぼっち」狩り。
独り身として暮らす世の美女たちを囲い、人口減少を止める。それが政府の考えたこと。あまりにも幼稚で、単純で、切ない政策だと僕:九丈伊佐木(くじょう・いさぎ)には思えるけれど。
『まあ、否定はしないけれど』
なぜ美女限定なのか? と問われれば、そこに確固たる理由はないらしい。美女、と銘打った方が世の男たちの婚活モチベーションを上げられるだとか、美女をただ野放しにするのはもったいないからだとか、根拠のない情報が飛び交っている。
『やれやれ』
この国がこんな風になってしまったのには、いくつか原因があるだろう。それらの原因が美女たちを「ぼっち」にさせ、偏屈な社会を形成してしまったのだから。
僕はこんな風に思う。彼女ら「美女ぼっち」を救うことは、イコールこの国を立て直すことだと。だからこそ、僕は立ち上がった。
件の「美女ぼっち」たちは、個人情報をビッグデータに照らし合わせて算出された美人指数によってランク分けされる。そして、そのランクの高い美女から順に高額な懸賞金が割り当てられる、という仕組みだ。
懸賞金の最高額は、、、、¥1億。
その「美女ぼっち」たちをいち早く囲い込み、政府の用意する専用施設【VIRGINITY】へ送り込むと、対象となる美女の懸賞金分が支払われるのだ。こうして生計を立てている僕みたいな奴のことを世間では「賞金狩り」と呼ぶ。
「今日の対象は……おっとお、渋谷の女の子じゃん」
僕ら賞金狩りには、日々政府から「美女ぼっち」囲い込みの依頼メールが届く。これは、便宜上そうした方が都合が良いためだ。
僕はスマホの画面を閉じ、ジーンズのポッケに突っ込む。腕時計を確認すると、12:00少し前。晴天の空のど真ん中には、容赦のない太陽が浮かんでいる。
「メシ食ってから渋谷に行こ」
とりあえず、近場のハンバーガーショップに滑り込む。そして、たったひとりで決起集会を開くとする。
断っておくが、これは合法的に世の美女との人脈をつくる、ナイスでスペシャルな、それでいておたんこナスなピーポーによる話である。
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