第5話

 笑って許してあげなよ。

 

 仕事で、そんなことを言われたことがあります。

 やってきた本人には悪気がないんだから、心を広くしてさ、笑ってあげなよ。

 さも当然のように、言われました。


 許せるものなら許したい。

 笑って、「いいーえ。大丈夫ですよー」って余裕をかましたい。

 

 でも、割り切ることは難しくて、私は、何度も何度も何度も傷ついた。


 どうしてそういうこと言うの? どうしてそういうことするの? 私が傷つくってわからない? 私が傷ついてるってわからない? 

 ねえ、ねえねえ、お願いだから、私を傷つけないで。


 そう思って、傷つきました。

 

 笑えませんよ。全然。


 笑えないですよ。全然。


 私の心は、正常に傷ついている。

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