『創と身だしなみ』

 きつてん『フォレスタ』にとうちやくすると、はつが声をかけてきた。

「ああ、そうか。上で子供たちが準備してるぞ」

「ありがとう、ございます」

 おくの「STAFF ONLY」と書かれたとびらを開くと勝手口付きのげんかんにつながっている。本当なら勝手口から来たほうが早いが、後々コーヒーを飲んでから帰るので、あいさつの一つはしておくために、店の入り口から来たのだった。

 それに、その時間差ではつようすけたちに内線で呼び出してくれるため、だれかしらがむかえに来る。

「おーっす」

 えを楽にするためにだろうか、うすの京子が階段を下りてきて、そうあきれかえりながら顔をそむける。

「んだよ」

「あのさ……何かしら、羽織って、出てきな」

 女の子の自覚があるなら、という言葉をんで、手近にあったタオルを放り投げ、京子が受け取った。

「だいたい仕上がってるけど、調ちようせいしたいから、って」

「……ん。行くよ」

「何顔赤くしてんだよ、変態。慣れっこじゃねえの」

「……あのねえ」

 大きなため息を背に受けて、京子はめんどうくさそうに顔をしかめながら、だまってクローゼット部屋に向かった。

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