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「桃子ちゃんですか?」
「そうなのよぉ」
右手を頬に当ててテンプレのような困った顔。そっか、一人娘の桃子ちゃんももうすぐ専門学校に行くんだよな。
「もともと進学するんだろうなと思っていたんだけど、まさか製菓は製菓でも和菓子じゃなくて洋菓子に行くとは思っていなくて」
ですよねー。桃子ちゃん、いつもお店を手伝っていたし、本当に和菓子が好きなんだなぁって思っていたから。俺も本人から聞いた時驚いたよ。
「なんとなくね、和菓子でうちの店を継いでくれるって思っていたから、やっぱりちょっとショックだったわね。裏切られたって言い方はちょっと違うんだけど、あんなに和菓子が好きだったのにって」
そりゃ、老舗の店だったらそう思うよな。代々子供が継いで来ているんならなおさら。京谷さん家は子供が桃子ちゃんしかいないし。
でも桃子ちゃんが言うには、継がないつもりはないって言ってたと思うけど。
「和菓子の勉強もしたいけれど、洋菓子の勉強もしたいって言ってね。和菓子の事はお父さんが教えてくれるけど、洋菓子はそうはいかないでしょって」
なるほど、なるほど。確かにそうだ。和菓子のプロが身近にいるんだから、努力次第でそれを手に入れることは出来るだろう。でも畑違いなら仕方ない。
「和と洋の良いところを取ったお菓子を作りたいからって言ってくれたから。反対もしたけど、今は良かったかなって。店の事も大事に思ってくれているし。学校の準備とか、大変なことには何にも変わりないんだけど」
「ふふ、桃子ちゃんのことですから、きっと素敵なお菓子を作ると思いますよ。将来は安泰ですね」
「うふふ、そんなのまだまだよ」
そう言いつつも女将さんは嬉しそうだ。確か、学校を決めた理由の一つに“好きな先輩がその学校へ通っているから”と言うのもあったような気がするけど・・・これは黙っておくことにしようか。
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