ユートピアとディストピアの境界で

すぐり

序章

幕が上がるとき

 肌に刺さるような日光が降り注ぐ。

 じりじりと肌が焼かれ、体中の水分が無くなってしまうようだ。辺りは一面の砂、砂、砂。

 砂漠のど真ん中で横たわっていると、自分の小ささを感じる。無力さを感じる。孤独を感じる。

 みんな、この感情が嫌いなのだろう。だから人は人を支配し、自分の力を示そうとし、一人にならないように拘束する。



 そうやって膨れ上がる不安や焦りの感情が何を引き起こすか。そんなのは目に見えているが、実際にその結末に達しないと人々は気付かない。

 この世界は一度壊れた。いや、壊された。

 過去に何度も壊れてはいるのだが、今回の戦争ではほぼ修復不可能なところまで世界中が壊された。

 今では人類の人口が全盛期の千分の一にまでなってしまっている。それでも多いとは思うが。

 戦争が残していったものは、多くの傷跡と科学技術、そしてトラウマ。



 そして、人口とともに人の生活する地域まで失われてしまっている。地球の殆どが、今いるような砂漠地帯だ。その為、人は皆、生活ができる数少ない土地へと移って行った。

 二度と闘いを起こさないように、幸せになるために……。



 人類は自らを監視させ拘束することで、ユートピアを作り上げた。



 しかし、戦後から70年近く経ち、その傷跡を見ようとしない人が出てくる。

 痛みを感じない人が出てくる。

 自ら拘束されることを選んだ人々を支配しようと思う人が出てくる。



 だからもう一度世界を壊さなければいけない。

 ユートピアのようなディストピアを、ディストピアのようなユートピアにする為に。



 このレジスタンスのちいさな力でどこまで世界を動かせるのか。

 みんなを信じて、運命に任せるしかない。



 世界が変わるまであと数日。 

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