異世界帰りの元勇者
7つの大剣の一つ。
――黒の大剣。この大剣を具現化させると、周囲の時を低速化させる。異世界帰りの勇者、沖田榮が持ち帰ったスキルだった。当初、魔素の低い地球では、具現化は不可能と、榮は思っていた。だが――。
「我が声に応えよ、常闇の宝具。来れ、輝きの大剣」
魔素を練り上げ、そして――。
ポカン。
頭を叩かれた。
「何やってるの、もぅ。榮のせいで遅刻するでしょ?」
「いや、ちょっと待ってよ、南! もうちょっとで、具現化が――」
「はいはい、厨二病、乙。全く、三ヶ月も行方不明かと思えば、異世界帰りとかワケのわからないことを言うしさ」
「いや、あれは本当のことで――」
「それより、遅刻するから急ぐの! ほら、また制服のネクタイが曲がってるし」
きゅっと結び直された。
「ちょっと、待って! 本当にあとちょっとで、具現化が!」
「……ちなみに、あと何分?」
「20分」
「待てるか!」
グイグイと引っ張られてしまう。
「いや、待って。詠唱が完了していないのに、魔法陣から動いたら処理しきれていない魔素が暴走を――」
「はいはい、良いから行くよ」
ぶん。
空気が震えた。
やり場のない魔力が唸るような音を上げて。
階段を降りる幼馴染たちが、一階に降りたことを見計らったかのように。
ぱりん。
窓ガラスを突き破って、それは外に放たれた。
■■■
この星には、異世界のような魔素がない。その代わり、未だ一部の学者にしか解析されていない、元素が存在していた。
・LUV(愛)
・BOMB(爆弾)
・COMMUNITY(社会)
・MIST(霧)
この霧そのものは人畜無害。ただ、特定の条件で巡り合った人々は、明らかな化学反応を示す。
社会生活の中、特定条件に反応し、まるでセットされた爆弾に火がつくようで。
テンプレが用意されていたかのように、感染した二人は、愛の病に落ちていく。各段階を集約し、この現象をラブコメ要素と一部の研究者たちは呼ぶ。言い得て妙である。
▶︎幼馴染
▶︎しばらく疎遠
▶︎起こしにくるのが日課
▶︎両片思い
上記条件での、平均感染率、60%。また、幸せな恋は周囲への感染率を高める要因ともなり得る。そこに異世界の魔法が組み合わさった。LBCM因子の感染率は、ほぼ100%。この辺りは、より詳細なデータ取得が必要と思われる。
既に異世界帰りの勇者が、珍しくない現象となった昨今、さらに正確なデータ取得が急がれる。
――とある科学者による、次代感染症における一考察より抜粋。
________________
診断メーカー「心を武器に具現化してみた」からお題(?)を拝借しました!
https://shindanmaker.com/579827
自分でも何を書いているんだろうって思ったのはナイショです(笑)
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