純と白



 隣に引っ越してきたスミは不思議なヤツだ。あれほど帰りたいと喚いていたのに、今じゃ雪が降る度に上機嫌で。


「白っ――」


 純が嬉しそうに笑う。完全防備でも突き刺すように寒い。肩と肩を寄り添わせバスを待つ。この雪だ。きっと今日も遅れてくる。学校に行くのも試練なのだ。


しろっ」


 純が真っ白な息を吐く。


「そうな」

「違うよ、君のお名前を呼んだの」

「……紛らわしいよな、俺の名前」


 そう言うと、純がクスクス笑う。



 ――君がね、私の知らない世界を教えてくれたの。カマクラ、餅つき、ワカサギ釣り。知らなかった、世界がこんなに綺麗だなんて。


 雪が光で乱反射して。

 イジメで転校をせざる得なかった純に――あえて答えず、俺はただ寄り添った。





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毎月300字小説

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