送りオオカミ



「送り狼になるなよ?」

「ならないよ!」


 同僚に反論すると、酔った先輩が擦りよるように寄りかかる。甘えてくる愛犬ペツトのようだって思ってしまう。


「送り狼みになってくれないの?」


 トロンとした目でそんなことを言う。


「なりませんよ!」

「ちぇっ」


 私、拗ねたから――そう主張するように、頬をふくらませる。


「それなら私がなっちゃおう」

「へ?」

「……言ってなかったけど、私、人狼種なんだ」


 雲に隠れていた月が、今度は僕らを照らす。尾と耳が揺れて――視界が回る。先輩に押し倒されたと気付いた時には、もう遅かった。


「せんぱ――」

「ごめん。私、今、発情期なの」


 ぺろっと舌を出す。


「優しくするからね?」

 初めてのキスの後、土の味がした。



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カクヨム換算、本文300字でした。

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