宝ものボックス


 整理をして出てきたのは【宝ものボックス】

 その蓋を開ける。出てきたのは二人の思い出の数々。それから折り紙で作った指輪。この対は、彼女はまだ持っている――わけないか。

 あの時の結婚式ごっごで僕は囁いたのだ。

 ――妻として愛することを誓います。

 幼くて、無責任な一言だった。

 

 

 勢いよく階段を駆け上がる音。振り向く間もなく彼女が入ってきた。

「どうしたの?」

 彼女の指には、折り紙で作られた指輪がはめられて。思わず目を丸くする。引っ越しは明日。近所のお兄ちゃん・妹分の関係が終わる最後の日――。

 と、指輪と指輪が触れる。でも、あの日の言葉は出ない。

 僕は、君の姉と結婚をするから。




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第80回Twitter300字SS参加作品

テーマ「宝」「でした。

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