破滅の王
全ての生きとし生けるものがずっと、憎かった。
この国は、種族差別の上に成り立つ。龍の血を引いた王族が政を取り仕切り、ヒトが仕える。半獣やドワーフは、ヒト族の下で奴隷として生きることでしか、許されない。
金脈採掘の過酷な労働環境のもと、家族や同胞が生き絶えていく。
それでも、ヒト族は
そんな時に、金脈の中に眠っていた青真珠に目を奪われた。
金ではないから、と。ヒト族の監督は目もくれ図、蹴飛ばして――転がった真珠が、俺の足元にわざわざやってくる。
〈ハロー?〉
青真珠がそう言っている気がした。
〈お前は、俺のことを理解できるんだろ?〉
そう軽薄な声が、脳裏に響く。
知らないわけがない。ドワーフ族は、鉱脈の中で、眠る魔力を掘り起こしては、道具に埋め込むのだ。
だが、ここでは鍛治ができるはずもない。
〈諦めるか?〉
青真珠がせせら笑うのを尻目に、俺は――青真珠に手を伸ばして――飲み込んだ。
青真珠は笑う。
〈いいぜ、愉快だ。お前のこと気に入ったよ〉
手のひらに青真珠が覗かせては消える。
〈本来の錬成をすっ飛ばすんだ。20年待て。そうしたら、あんたの願いを全て叶えよう。あんたの体に定着するまで、な〉
生きとしいけるものを、全て憎む。それだけのために残りの時間を生きる――。
そのはずだんだったのだが――。
一つの時代が終わって。
龍人を王族とし、ヒト族が政を担うそんな時代が終わって――。
俺は、戦乱の最中捨てられたヒトの乳児を抱いていた。
〈お前はこれで自由だ。とりあえず、この赤ん坊から血祭りにあげるのも一興かもしれんな〉
青真珠が手のひらから覗く――その青真珠を、俺は乳児の唇に触れさせた。その子は反射的に、吸い付く。
〈バカ、貴様、何をやって――〉
魔力で、母乳を流してやってくれ。それぐらい、造作ないだろ?
ニッと俺は笑う。
魔石は大概にして、嘘つきだ。
20年も待たなくても、魔力は定着していた。
それでも、どうでもよかったのだ。
20年待てば、劫火で焼く。焼き尽くす、それだけを夢見てきたのに。
一番憎んでいた、ヒト族の赤子なんて、捨てればいいものを。生後一人では生きられない存在だ。ヒト族なんて、こんなにも脆い。オトナになれば、あんなにも狡猾だが。
〈育てるのか?〉
それもまた、面白いかもしれない。
〈バカだ、お前は。ドワーフの一族を迫害した一族を、しかも王族の――〉
うるさい。
とりあえず、お前はオシャブリでいろ。俺は小さく笑みながら、火が回る王都を後にして――。
どこかの村で鍛冶屋でもするか、そんなことを思いながら。
________________
twitter診断メーカーより。
オカザキレオさんの隠された能力とは
【破滅の王になれる戦闘能力】
です
今この瞬間から「20年後」に覚醒します
から、なんとなく書きました。
自分の年齢+20歳は、ドワーフんしては、まだ若いかという妄想から。
ちなみに。
※作者注記
奴畜(ドチク)という言葉は現在の日本語にはなく、あくまでこの世界の蔑称として見ていただけたらと。
ただし、調べてみると、農奴としての意味合いで、古典に出ているという表記もあり、インスピレーションで単純に書いてみたにしては、なかなか面白いなぁと個人的に。
参考web
ザイモツ【財物】とドチク【奴畜】 | 情報言語学研究室
http://club.ap.teacup.com/hagi/105.html
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