君の色


「どの色がいいかなぁ」

 ニコニコ顔で言う。憧れていた先輩とのデートらしいが、デートで着る服の相談ぐらい、女子としろと思う。

 そう言うと、男子視点での評価が欲しいからよ、と楽し気に笑う。

 思わず僕が指をさしたのは真っ白なワンピースで。

「へぇ、こういうのが好みなんだね」

 好みも何も、君が好きな色だから。

「デート楽しんでおいで」

 我ながら作り笑いが上手くなったと思う。





 真っ白なワンピースを着た彼女が目の前にいて唖然とする。

「デートは?」

「片思いの人がね、気を引いても、一向に鈍感な人だったからね、しびれを切らしたのでした」

 ニッコリ笑って、僕の言葉を待つつもりらしい。

 答えも何も――ずっと前から、君色に染まっている。

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