最後の一言
見る者が見れば、妖精が寄り添うように舞ったのが見えただろう。
銀の粉を撒き散らしながら、妖精は哀悼を示す。それだって魔力の無い常人には、風がそよぐ程度でしかない。
最後の賢者と呼ばれた老人が、この世界に来たのは、350年前。彼は異文化の国から漂流したと言われる。魔力が無い癖に、精霊と交わる事ができ、火種や雷を機械によって起こした。泥水を飲み水に変えたのも、かの老人の功績だった。
その老人が最後に残した言葉は――。
この世界の住民には意味不明で不明瞭な言葉たった。
それもそうかと、最初から付き合いだったカマドの精霊は溜息をつく。
彼の国の言語は、この国では全く解読不能だから当然か。
(だけどねぇ……)
呆れるしかないというのはこの事か。
彼の言葉は、後進の学者たちの研究意欲を掻き立てる、聖典として扱われるのは難くない。
(でもねぇ……)
――おうどん、食べたい。
(あんた、昨日も食ったじゃない)
――それから、君が好き。
(そっちを先にに言え!)
300年は精霊にとっても短くない時だ。
悲しいという感情は精霊には持ち得ない。
カマドの精霊にとっては、食わせる食い扶持がいなくなっただけなのに――その火が消える。
風がそよぐ。
カマドに火が起こせない。
その意味を賢いこの国の人達はよく理解していた。
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診断メーカーより。
「オカザキレオさんの最後の一言はおうどん食べたい···です」
なんて、もの書いてるんでしょう、僕は。
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