3題
ポロリと栞が落ちる。無造作に読み漁っていた本から。
あの子と僕をつなげる本だった――という事をすっかりと忘れていた。
いっそ、忘れた方が楽な方がある。
そう言ったのは彼女だった。
――正直者が馬鹿を見る。
そう言って、時間を進めることを止めたのだ。
栞から先は白紙――。
それが代償なのを、本から溢れる記憶の羅列が全てを物語る。
この楽園は偽物だ。
ベールを剥げば、
血の色と腐臭が滲む。
夢を殺してまでも
大人たちの都合のいい現実の言いなりになる。
諦めきれなかった夢が
この本の世界では、
ケダモノに成る。
逆を返せば、それだけ僕たちの夢は死んでいく。
――我を崇めよ。
それは、栞に書かれた無意味な言葉のようであり
再び始めるための魔法の言葉でもあって。
我が名において命じる。
月の裏側の君よ。夜の女王よ。忘却の天女よ。
白紙のページが光り輝いて。
僕はその光に向けて、指でなぞるように
字を描く。
僕が始めた物語を
僕が終わらせるために。
今、会いに行く。
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twitter 診断メーカーより。
オカザキレオさんへのお題は【30/小さな栞】【44/我を崇めよ】【63/正直者が馬鹿を見る】です。
#100分の3題
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