最後の吸血鬼


 それは汚れをなにひとつ許さない、絹のドレスを纏った少女の肖像画だった。表情は硬く、笑むことなく、むしろ瞳孔は見開かれて。愛らしさと恐れが入り混じって、違和感しかなく、私は思わす立ち止まった。


 時計が鐘を打ち鳴らし、時刻を告げる。

 周りには誰もいない。


 表題は「最後の吸血鬼」


 あまりにも可憐な少女に、それは似合わないと思ってしまった。

 と――白い腕が、ドレスが、花の香りが、私の腕を掴む。


(え?)


 刹那でドレスを着せられた私と、パンツスーツを着た、絵のなかの少女が入れ替わって。

 ありがとうね。


 絵の前で、少女は嗤った。

 300年は長かったけど、ようやく私、血が吸えるわ。

 

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